こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キッズ・リターン 再会の時

otello2013-10-11

キッズ・リターン 再会の時

監督 清水浩
出演 平岡祐太/三浦貴大/倉科カナ/中尾明慶/市川しんぺー/小倉久寛/池内博之/杉本哲太/ベンガル
ナンバー 207
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

高校時代は落ちこぼれていても不良になって突っ張っていればカッコはついた。だが、中途半端なまま大人になった彼らは、行くあてもなくさまよっている。くいっぱぐれたヤクザと引退勧告されたボクサー、再会した2人は“見返してやろうぜ”という言葉と共にもう一度挑戦しようとする。かつて追いかけたが叶わなかった夢、映画はもはや若くはない彼らが人生の岐路に立ち、もがき苦しむ姿を描く。己の可能性に根拠なき自信を持てた時代は遠い昔、今は能力の限界も感じている。それでもこのままあきらめるわけにはいかないと、騒ぐ血を抑えきれない男たち。彼らの“終わらない青春”が切なくリアルだ。

刑期を満了して出所したマサルは兄貴分を訪ねるが、すでに組は解散、しがない取り立て屋になるしかない。ボクシングに挫折したシンジはバイトに精を出す日々を送っている。10年ぶりに偶然顔を合わせた2人は旧交を温めるうちに、再起を誓う。

希望と再生の物語のはずなのに、カメラは突き放したトーンで2人を見つめる。決して悲劇を予感させるタッチではないが、明るい展開を期待させもしない。長回しのカットを多用した映像は、彼らの熱き思いを反映させようとはせず、現実の厳しさの中での彼ら息苦しさ伝えようとするばかり。はたしてマサルの暴走は敵対ヤクザ組織に目をつけられる羽目になり、徐々に追い詰められていく。猛練習で鍛え直し、日本ランカーに勝ったシンジの肉体にも異変が起き始める。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

闘志を前面に出さず自己主張もせず、淡々と目の前の課題をこなしていくシンジの寡黙なキャラクターは前作を引き継いでいる。しかし、金子賢が扮した世の中をなめきったいかにも狡猾なチンピラ然としたマサルは、三浦貴大が演じると苦悩する真面目な男に見えてしまうのが難点。左手の自由が奪われた上、刑務所で多少は知恵をつけたことからくるマサルの成長なのかもしれないが、もっとギラギラと凶暴で自分から破滅に飛び込んでいくような強烈な個性を放ってほしかった。

オススメ度 ★★*

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