こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ブリングリング

otello2013-10-17

ブリングリング THE BLING RING

監督 ソフィア・コッポラ
出演 エマ・ワトソン/レスリー・マン/タイッサ・ファーミガ/クレア・ジュリアン/イズラエル・ブルサール
ナンバー 249
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

物質的には十分に恵まれている、家庭環境も極端に歪んでいるわけではない。だが学校に居場所がなく心を許せる友達もいない。そんなティーンエージャーたちが手に入れたいものは“自分は周囲の人間とは違うんだ”という優越感。クラブでカネをばらまきドラッグをキメて騒いでいる間だけは、生きている実感を得られるのだ。物語は豪奢なパーティに明け暮れるようなライフスタイルに憧れ、セレブ達の豪邸で窃盗を繰り返した4人の少女と1人の少年の暴走を描く。逮捕され、有罪判決を受けてなお「これは学びの場だった」と、悪びれずに答える一人の少女に象徴される米国人のポジティブ思考の根深い病巣を、コッポラ監督は鋭く抉る。

転校生のマークはレベッカに声をかけられ路上駐車のクルマから貴重品を置き引きする。その後、友人宅に空き巣に入り成功、味を占めた彼らはニック、サム、クロエを仲間に加え高級住宅街を荒らしまわる。

家の住所や侵入ポイント、住人のスケジュールはネットで調べられる。監視カメラ以外のセキュリティはほとんど機能していない。もともと犯罪が少ない地域なのだろう、クルマや自宅をロックしない金持ちの多さに驚く。レベッカたちは易々と忍び込み、物色し、気に入ったものを持ち出す。特に、何度も盗みに入るパリス・ヒルトン宅の、クッションにプリントされた顔写真や壁一面に飾られた肖像の数々、さらにイメルダ・マルコス顔負けの靴コレクションやクラブルームなど“実物”のディテールが、映像にリアリティと躍動感、奥行きを与えている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

警察に踏み込まれても、素直に従うのはマークのみで、少女たちは図々しくしらを切る。きわめて自己中心的な犯罪にもかかわらず、ニッキーなど反省するどころか将来指導者になるための試練とまで言い切る。映画は彼らに共感もしないが批判もしない。ただ一定の距離感を置くことで、明らかな証拠が挙がっていても“己の非を認めたら負け”と育てられた子供たちは不幸だと思わせる力があった。

オススメ度 ★★★

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