こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

人類資金

otello2013-10-20

人類資金

監督 阪本順治
出演 佐藤浩市/香取慎吾/森山未來/観月ありさ/岸部一徳/オダギリジョー/ユ・ジテ/ヴィンセント・ギャロ/仲代達矢
ナンバー 257
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

騙しているつもりが利用され、操っているはずが躍らされている。戦後、さまざまな巨額の詐欺事件が起きた「M資金」。映画は、マネーゲーム資金と堕した「M資金」を正しい使い道に戻そうとする戦後世代の奮闘を描く。海に沈められた金塊、怪しげな財団、所詮は米国人のカネ儲けの手段に過ぎない日本人。世界の富の99%を独占する富裕層と、数十億人の貧困層。それらの対立項を軸に、ある種の正義感に目覚めた主人公の冒険の旅は、コンゲームとアクションが入り混じりより複雑にねじれていく。だが、東京・極東ロシア・東南アジア・NYと地球を半周する壮大なスケールに見合う内容に乏しく、「人」に投資してこそカネは生きるというテーマにたどり着くまで迷走が続く。

M資金」をネタに詐欺を繰り返す真船は東南アジア系の男・セキに、本物の「M資金」に関係するグループの事務所に呼び出される。Mと名乗る責任者から「M資金」の管理財団から10兆円を詐取する計画を依頼され、セキと共にハバロフスクに飛ぶ。

その後、真船やセキの前に自衛隊のスパイ組織や米国の殺し屋が現れたり、「M資金」を“相続”した老人などの思惑が絡むなど、ますます全体像が見えづらくなっていく。さらにセキの故郷である極貧国の資源開発を利用して国際マーケットに仕手戦を仕掛けるなど、真船は自らの詐欺行為を“良心の戦い”と定義づけていく。ところがそのエピソードの数々は極めて大雑把で、“ホラ話にリアリティを持たせるのはディテール”のルールを無視している。だいたい、電話とパソコンで取引するのに50億円分の札束を用意する必要があるのか。邪魔になるだけと思うが。。。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、セキが祖国の代表として国連総会に乗り込みスピーチする。グローバルな格差を是正するために、金融取引で得たカネは途上国の子供たちの教育に使うべきと訴える意気はよし。しかし、それと「M資金」の話はまったく別物、なんでこうなってしまったのだろう。。。

オススメ度 ★★

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