こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ザ・イースト

otello2013-10-25

ザ・イースト The East

監督 ザル・バトマングリ
出演 ブリット・マーリング/アレクサンダー・スカルスガルド/エレン・ペイジ/ジュリア・オーモンド/パトリシア・クラークソン
ナンバー 259
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

両手を拘束されたままスプーンでスープを飲めるのか。食卓に招待されたヒロインは考えが浮かばぬまま逡巡し、思い切ってスプーンをくわえるが、スープは口に入らない。居合わせた若者らは、自分のスプーンですくったスープを隣のメンバーに飲ませ、お返しに相手から飲ませてもらう。環境を守るのは人間を思いやること。自然と共存し、無駄のない生活を送り、仲間を大切にする、そんな環境保護テロリストの思想が凝縮されたシーンは、21世紀の文明社会の地球に対する接し方を示している。映画は、環境や人体に重大な悪影響を及ぼす害毒をまき散らしながらも反省の色を見せない大企業に天誅を加えるグループに潜入した調査員が、良心と任務の間で葛藤する姿を描く。物質文明を否定しつつもITを駆使し、暴力を極力排した彼らの戦い方は非常にクールだ。

セキュリティ会社の調査員・ジェーンは、サラと名を変えて秘密グループ・イーストに接触、リーダーのベンジーに加入を認められる。製薬会社へのテロ行為を事前に察知して上司に報告するが、上司は「顧客ではない」と傍観を命じる。

悪人とはいえ、人が傷つくのを黙って見ているしかないサラ。一方でベンジーたちの信条にも共感し始めている。さらに利益の追求しか頭にない上司の態度に忠誠心が揺らぐ。この有能だが冷血で強欲な女上司に扮したパトリシア・クラークソンの嫌味たらしいまでの演技が米国の競争社会の厳しさを象徴し、まだ正義感を完全に捨てきれないサラが反発を覚えても仕方ないと思えるほどの怪演だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、イーストは第二のテロを実行するが、期待した成果を上げられなかったうえ主要メンバーを失う。だが、ベンジーはサラを頼りに、最後のテロを決行に移す。そこでサラは本当に戦うべき敵と初めて対峙し、己の価値を試されていく。地球をレイプする側に立つのか、理性ある人間として行動するのか。見事なまでのどんでん返しの中で彼女が下した選択に、こういう若者がいる限り未来は大丈夫ではないかという希望が見いだせた。

オススメ度 ★★★

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