こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

潔く柔く きよくやわく

otello2013-10-28

潔く柔く きよくやわく

監督 新城毅彦
出演 長澤まさみ/岡田将生/波瑠/中村蒼/古川雄輝/平田薫/田山涼成/和田聰宏/MEGUMI/池脇千鶴/高良健吾
ナンバー 262
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

死んでいった友人の思いを、残った者はいつまで受け止めているべきなのか。答えを求めても相手はもういない。償おうとしても言葉は届かない。ひたすら罪悪感を抱えたまま生きていくしかない。物語は、 “恋人未満”の幼馴染の突然の死が原因で、いまだにこじれた感情に押しつぶされそうになる女が新たな一歩を踏み出すまでを描く。忘れてはいけないのに時々忘れそうになる自分を罰するかのように、心に鎧を着せた大人になってしまったヒロイン。そんな彼女の脳裏に浮かぶ、高校1年生だった男女4人のグループ交際が友情から恋に変わっていく時間が初々しくも切ない。

高校時代、同級生・ハルタの気持ちに気づきつつも他の男子とデートしていたカンナは、ハルタの交通事故死に自責の念を覚える。8年後、宣伝会社に就職したカンナは雑誌社の禄と出会い、彼もまた同じ痛みを持つと知らされる。

ふたりに共通するのは、失ったのが“関わりは濃いが、いちばん大切な人ではない”こと。中途半端な死者への距離感ゆえ、余計にひとりで苦しんできたのだろう。運命の必然に引きつけられるふたりは、最初は反発するが徐々に近づいていく。その過程で、禄が事故死させた少女の姉に付きまとわれ、故人の日記を読まされたり遺影を拝まされたりする上、ハイキングにつき合わされるエピソードが挿入される。満面の笑顔と明るい態度で禄に接し、愛する家族を奪われた悲しみを味あわせるのみならず、娘の発育障害までも禄に背負わせようとするこの姉の怨念が恐ろしかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、お互いを縛っていた過去と決別するため故郷の街に帰ったふたりは、懐かしい光景や忌まわしい出来事といった様々な記憶をふるいにかけ、美しい思い出だけに浄化する。いかにも少女マンガらしい通俗的な設定ながら、恋と人生に前向きに進もうとする若いふたりの姿に好感が持てた。ただ、少女マンガ家の横恋慕は不要だった。原作では重要な転機となるエピソードなのかもしれないが。。。

オススメ度 ★★*

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