こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パリ、ただよう花

otello2013-10-29

パリ、ただよう花 Love and Bruises

監督 ロウ・イエ
出演 コリーヌ・ヤン/タハール・ラヒム
ナンバー 253
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

むさぼるように相手を求めるのに、体を重ねるほど心は冷めていく。だが、すぐには会えない空間的な距離ができると、欲しい気持ちを抑えきれない。一緒にいると息苦しい、離れているのは耐えられない、不安定なハンディカメラはそんな女の矛盾を正面からとらえ、愛の本質に迫っていく。そして、どこにいても何をしていても満たされず、ここじゃない別の場所に自分の居所があるのではとさまよい続ける彼女の孤独がリアルに再現される。映画はヒロインと恋人の直情的な関係に焦点を当て、ふたりの間に横たわる溝の深さを描く。それは人種でも国籍でもない、階級。インテリと無産階級の労働者はやはり水と油なのだ。

パリに留学中の中国人・ホアは建築現場の作業員・マチューと出会い、彼の強引さに惹かれる。ホアはマチューとの荒々しいセックスに酔い、付き合い始めるが、マチューの嘘や嫉妬深さ、古い考え方に、少しずつ違和感を覚えていく。

女性が働くのは当たり前の環境で育ったホア、家族は男が養うものと疑わないマチュー。情熱的に口説いてくれるマチューに最初はインテリ層にはない魅力を感じていたホアも、男は常に強くなければならないと見栄を張る彼の底の浅さに気づく。さらに、喧嘩早く窃盗に手を染めレイプまがいのことを平気でする直情径行型のマチューの友人たちと、男女間の痴話げんかすら理詰めに解決しようとするホアの留学生仲間に象徴される、教育を受けた者と受けていない者の決定的な価値観の違い。相互理解など初めから無理、でもマチューを忘れられないホアの揺れ動く胸の内が切なかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてマチューの裏切りを知り、ホアは北京に帰る。それでもマチューが行方不明になったと聞くと、彼を探しにフランスに戻る。マチューに対する思いは真実なのか偽りなのか、もはや彼女自身にも分からない。理性ではコントロールできない感情を持て余し、時に弱さをさらけ出す彼女がわずかだがチャーミングに見えた。。。

オススメ度 ★★*

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