こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

あなたを抱きしめる日まで

otello2013-12-05

あなたを抱きしめる日まで Philomena

監督 スティーブン・フリアーズ
出演 ジュディ・デンチ/スティーブ・クーガン/ルース・マッケイブ/アンナ・マックスウェル・マーティン
ナンバー 286
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

生涯誰にも話さなかったけれど、思い出さなかった日はない。“罪”を犯したせいで奪われたわが子にもう一度会いたい、そしてこの手で抱きしめたい。もはや命の終わりが見え始めたヒロインは、ずっと胸に引っ掛かっていた、生き別れた息子との再会を願う。物語は、そんな彼女が敏腕ジャーナリストの助力で関係者を訪ね調査する過程を描く。それは、母と息子の思いを探る旅でもあり、神の名を借りた邪悪な行為の告発でもある。ところが、シリアスで感動的な行程になるはずなのに、無邪気ともいえるヒロインの言動のおかげで、映画はむしろ凸凹コンビの珍道中という趣を持つ。ロマンス小説が大好きで世間知らずな老婆をジュディ・デンチが茶目っ気たっぷりに演じる。

望まぬ妊娠をしたアイルランド人のフィロミナは、カトリックの修道院にで出産するが、息子は米国人に引き取られる。50年後、フィロミナは記者・マーティンに息子探しを依頼する。

かつて自分を奴隷のように扱った修道院には門前払いされる。マーティンは米国の伝手を頼りに息子・マイケルの消息を追うが、すでに彼は亡くなっていた。大統領の法律顧問まで務めていたマイケルを知る人は彼の死を深く悼んでいるが、死因については口が重い。母親にとってはあまり耳にしたくない息子の性癖、それでもフィロミナは事実を受け入れる決意をする。そのあたりの揺れ動く心理を克服し、何を聞いても驚かないと覚悟した後のフィロミナは、母の強さを象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

さらに、マイケルも実の母の行方に多大な関心を抱ていたと知り、フィロミナは息子を生んだのも里子に出されたのも意味があったと思い至る。それは神の意志なのか、真実にようやくたどり着いても、本来憎むべき人物に対してフィロミナは怒りを抑えて接する。すべてを理解したことで彼女も息子も救われた、神(=修道院)の所業を赦すフィロミナの寛容に、心が洗われた。

オススメ度 ★★★*

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