こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ゲノムハザード ある天才科学者の5日間

otello2013-12-09

ゲノムハザード ある天才科学者の5日間

監督 キム・ソンス
出演 西島秀俊/キム・ヒョジン/真木よう子/浜田学/中村ゆり/パク・トンハ/イ・ギョンヨン/伊武雅刀
ナンバー 290
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

見知らぬ女の死体、妻と名乗る女からの電話、警察を騙る2人組。何が起きているのかわからないまま走り続けなければならない。そして浮かび上がる断片的な記憶と曖昧になる自己認識。それでも危険に追われている現状だけは察知できる。映画はそんな主人公の恐怖と不安、焦りと怒りに同調し、見る者を先の見えない迷宮に導いていく。その過程はミステリアスかつスリリング、畳み掛けるような展開に混乱し戸惑いながら、彼の“自分探し”の冒険を体感させてくれる。「記憶こそが人格」の言葉に象徴される人間の欲望と尊厳のはざまで揺れ動く心理を西嶋秀俊がリアルに再現する。

アパートに戻った石上は数十本のろうそくと女の死体を見つける。直後に2人組の襲撃にあい逃走、途中で韓国人記者・ジウォンと知り合う。ジウォンは陰謀の匂いかぎつけ、石神と行動を共にする。

時折口にする朝鮮語、薬品を調合するノウハウ、時間が経つうちに石上が知らないはずの知識とともに別人格が顔を覗かせる。それはジヌという名の、“記憶を保存するウイルス”を開発した韓国人科学者。二つの人格は混在し、彼の精神は破たん寸前まで追い込まれていく。だが、葛藤と苦悩の中で、わずかな手がかりとジウォンの助けを頼りに核心に迫っていく執念が、真実を究めんとする科学者としての矜持を呼び起こす。石上の記憶が薄れる一方でジヌの人格が表出する、もはや本人にもコントロールできなくなった脳内の変化にもがき苦しむジヌの姿は、アイデンティティの基本である記憶を守り通すことが本質的な生存本能であると訴えている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて功を急ぐ研究者や韓国の製薬会社などの思惑が入り乱れつつ事件の全貌が明らかになり、舞台をソウルに移す。するとアクションがギアチェンジするのは、上書きされていたジヌの意識が復活し思考がクリアになったからだろう。“記憶は消えても思い出は残る”、ジヌの思いはどちらの女への愛だったのか。。。

オススメ度 ★★★


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