こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハリケーンアワー

otello2013-12-13

ハリケーンアワー HOURS

監督 エリック・ハイセラー
出演 ポール・ウォーカー/ジェネシス・ドロリゲス
ナンバー 296
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

この子だけは死なせるわけにはいかない! 孤立し、水や食料が尽きかけても、生まれたばかりのわが子を守るために自力で電力を確保する男。救助を呼ぼうとしても時間が足りず、焦りと疲労が蓄積される。さらに銃を持ったコソ泥やチンピラの襲撃。映画は、絶望的な逆境に耐える主人公の意志の強さを描く。吸入器のバッテリー容量はわずか、手動の発電機で送電しても3分以上集中治療室から離れられない。短いタイムリミットで点滴を探し、通信機器を求めて全力疾走する。命という希望は絶対に手離さない、そんな彼の、決してあきらめない精神力に深い感銘を覚える。

愛妻は出産で死亡、新生児は呼吸器不全で集中治療室に入れられる。折しも大型ハリケーンが直撃、病院スタッフは全員避難、治療室に残された新生児の父・ノーランはひたすら救援を待つ。

だが、病院は浸水で停電、自家発電機も機能しない。ノーランは古い発電機で赤ちゃんの肺に酸素を送る。数時間の我慢と思っていたのに、ハリケーンが去った後も誰も助けには来ないし、電話や無線機は壊れ外部に連絡が取れない。何とか手を打とうと病院内を走り回るが、バッテリー切れを知らせるアラームのせいで遠くまで行けない。傷つき疲れ果て睡魔に襲われても発電機のハンドルは回し続けなければならず、父子共に生存の可能性が低くなる。折れそうになる心と戦い、妻との思い出を赤ちゃんに語ることで自分を奮い立たせる。妻への愛、娘への愛、愛こそがノーランを支えている。体を張って奮闘するノーランは時の経過とともに薄汚れていくが、彼の思いは“生きる”という一点に、より研ぎ澄まされていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

映画は単なる美談に終わらせず、火事場泥棒なども登場させ、ノーランに無用の暴力まで振るわせる。それでも、極限状態でも己を見失わず何が一番大切かを見極めたノーランの姿は、むしろ聖者のように神々しく見えてくる。低予算の単純な構成ながら、命の讃歌を高らかに朗唱する作品だった。

オススメ度 ★★★*

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