こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グロリアの青春

otello2013-12-21

グロリアの青春 Gloria

監督 セバスティアン・レリオ
出演 パウリーナ・ガルシア/セルヒオ・エルナンデス/マルシアル・タグレ/ディエゴ・フォンテシージャ
ナンバー 301
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

子育ては終え、もうすぐ孫ができる。仕事に不満はなく、ひとり暮らしの淋しさにも慣れた。まだ50代、女の盛りはこれからと出会いを求めて夜な夜な街に繰り出す。もう情熱に身を焦がすほど若くない。一方で胸の内を聞いてくれ、肌のぬくもりを感じられる男がいることの安らぎには飢えている。そんなヒロインが同年代のバツイチ男と恋に落ちるが、彼の煮え切らない態度に苛立ちを募らせていく。自分の面倒を見ればよいだけの女と背負うモノがある男、好きな男しか見えなくなる女と過去に目配りしなければならない男。人生の経験を十分に重ねたのにうまくかみ合わない男女の心のすれ違いに翻弄される彼女の感情がリアルに再現される。

独身キャリアウーマンのグロリアはダンスホールでナンパしてきたロドルフォと一夜を過ごす。彼の熱烈なアプローチでふたりは付き合い始めるが、食事中にも別居中の妻や娘からの電話を受けるロドルフォにグロリアはうんざりする。

その後もロドルフォは、時にグロリアより別れたはずの妻子を優先する。 “帰る”の一言が言えず黙って姿を消す、その優柔不断さがロドルフォの性格を物語り、責任感のなさがグロリアを怒らせる。このあたり、社会人の実績を積んだ大人の行動とはとても思えないが、年齢に関係なく情愛が絡むと非常識な対応をしてしまう人もいるのだ。それでも、置き去りにされて腹を立ていてもナンパされるとついていくグロリアの現実主義は、女のしたたかさを象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

10代から20代だったころ、グロリアの祖国・チリは軍事独裁政権下で、生きづらい時代だったのだろう。政治的にも自由になり、家族という重荷から解放されたいま、グロリアの世代は失われた青春を取り戻すかのごとく恋愛に貪欲になっている。興味を示してくれる男はたくさんいるし、なにより妊娠の心配もない、「死ぬまでセックス」の風潮は地球の裏側でも大いに盛り上がっているようだ。。。

オススメ度 ★★★

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