こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワレサ 連帯の男

otello2014-01-11

ワレサ 連帯の男  Walesa. Czlowiek z nadziei

監督 アンジェイ・ワイダ
出演 ロベルト・ビェンツキェビチ/アグニェシュカ・グロホウスカ/マリア・ロザリア・オマジオ/ズビグニエフ・ザマホフスキー
ナンバー 307
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

たび重なる逮捕にも意志を曲げず労働者の権利を訴え続ける主人公。一方で妻の愚痴に困った表情を見せ、子供たちを深く愛する家族思いの父親でもある。現代ポーランド建国の父・ワレサ。連帯指導者のしたたかな表の顔の陰で語られる機会の少なかった“普通の男”のワレサは、時に弱さを見せ時に逡巡し時にわがままになる。映画は高等教育を受けていない造船所の電気技師がいかにして人望を集め世界を変えていったかを、イタリア人ジャーナリストのインタビューという形で再現する。自分の言葉に酔い、美談で自画自賛するようなところもあり、彼もまた名誉を望む人間的な部分があるのをうかがわせる。もはや階級闘争は遠い昔、当時の人民が欲したのは食料と住宅、まともな暮らしと自由。民衆蜂起の数々は、結果が分かっていてもスリリングだ。

1970年、食料価格暴騰に端を発するデモで警察に連行されたワレサは、取り調べで様々な書類にサインしてしまう。数年後、造船所に待遇改善要求を出し活動家として頭角を現していく。

妻の出産に立ち会えなかったり、ベビーカーにビラを隠していたことから赤ちゃんごと勾留されたりと、公安から嫌がらせを受けるワレサ。おなかをすかせた赤ちゃんに女性警官が乳をやるなど、ガチガチの思想に固まった者ばかりではなく当局にも人情があるのが新鮮だった。そして、造船所のストでワレサは労働者を率いてくれと頼まれる。最初、大役が務まるか迷っていたワレサは、ほどなく造船所だけでなく市内の全労働者のまとめ役になっていく。“腹をくくるのがリーダーの役目”とインタビューに答えるが、文字通り造船所の“壁を乗り越えた”瞬間に彼は己の運命に目覚めたのだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

連帯の勝利、ノーベル平和賞の受賞、大統領就任といったその後の活躍は歴史が示す通り。ポーランド栄光の時代を築いた英雄を記録と記憶に残しておきたい、今や90歳に届かんとするアンジェイ・ワイダ監督の、これは遺言にも似た次世代へメッセージなのだ。。。

オススメ度 ★★★

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