こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジャッジ!

otello2014-01-15

ジャッジ!

監督 永井聡
出演 妻夫木聡/北川景子/リリー・フランキー/鈴木京香/豊川悦司
ナンバー 9
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

“コンコンコンコンコシコシコシコシ”“無茶と書いてチャンスと読め!”“ペンを回すのは言いたいことがある時”“カマキリ!”“ちくわの穴から未来が見える”etc。わずかな時間で相手の注意を引き核心を伝えなければならないTVCMのエッセンスが凝縮された言葉とエピソードの数々は、直接心に届く楽しさに満ちている。しかしその裏には、CMが世間に認められれば嘘も裏切りも裏工作もすべて正当化される、ドロドロとした人間の欲望が渦巻く。ところがこの世界で生きる人々は当たり前のように駆け引き受け入れている。物語はそんな広告業界で、バカ正直なまでに純粋な青年が巻き起こす騒動を描く。

大手広告代理店のAD・喜一郎は上司から審査員として国際広告祭に参加しろと命令される。同僚のひかりに同行を頼み現地に乗り込むが、“つまらなすぎるちくわのCM”を入賞させなければクビと脅される。

自作のCMを必死でアピールする他国のクリエーターたちに対し、クライアントから押し付けられた「ちくわCM」にはまったく愛情が持てない喜一郎は売り込みにも消極的。一方で無理やり作らされたきつねうどんのCMが一般客に大ウケし、変な自信をつけたりする。その過程で、会社の歯車になっている自分とCMクリエーターを目指したころの夢との軋轢に苦しむ喜一郎のピントはずれな一生懸命さが、ベテランクリエーターたちに忘れていた初心を思い出させる。それは、この映画の作り手自身の体験に基づく自戒。リアルに再現するには照れくさく、モデルにした人々からのクレームも気にしているのだろう。笑いとばすことでオブラートにくるみさわやかなコメディに昇華していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて日本人が作ったCMが気に入った喜一郎は、彼女がライバル会社社員であるにもかかわらず応援しようとする。そこに打算はない、感情に訴えるメッセージこそが喜一郎の選択基準なのだ。不器用でも泥臭くても真剣に努力する、それが成功する唯一の道というこの作品の主張が、スクリーンから漲っていた。。。

オススメ度 ★★★

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