こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

危険な関係

otello2014-01-16

危険な関係 危險關係

監督 ホ・ジノ
出演 チャン・ツィイー/チャン・ドンゴン/セシリア・チャン/ショーン・ドウ/リサ・ルー
ナンバー 7
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

クローズアップの多用と肢体をなめるカメラワークは、抱擁し接吻する恋人たちの息遣いまで体感させる。愛なのか戯れなのか、繊細かつ流麗なショットは爛熟した時代に真実を求めて彷徨する男と女の切なくはかない魂の軌跡を再現する。決して本気になってはいけない、そんなルールの下で偽りの言葉を唇に乗せ裏切りの毒牙を研ぐ主人公が、自ら仕掛けた罠に足を取られ身動きとれなくなっていく。一方、彼に関わって新たな人生を切り開いていく女たち。映画は1930年代の上海を舞台に、カネと暇を持て余した上流階級の不毛な生き方を描く。ゴシップと恋を競うかのごとき彼らの日常は、うたかたの刺激を楽しむデカダンス。耽美に満ちた映像は、こんな生活がいつまでも続かないと気づいている彼らの滅びの美学すら感じた。

プレイボーイのファンは女実業家のモーと、身持ちの固い未亡人・フェンユーを落とせるか賭けをする。遠縁を口実にフェンユーの豪邸に乗り込んだファンはあの手この手でフェンユーを口説くが全く相手にされない。

抗日ビラを撒くフェンユーの夫の教え子をファンが救ったのをきっかけに、フェンユーはファンに心を開いていく。誰にでも「愛している」と囁く男だと知っている。女たらしの評判も聞いている。でも魔法にかけられたように彼の魅力の虜になり、キスを迫られても抗う術がない。静かに落涙することでしか夫に贖えないフェンユー。チャン・ツィイーの透き通った滑らかな素肌が彼女の哀しみと苦悩を代弁していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて夫への負い目を克服したフェンユーはファンへの思いを抑えきれなくなる。彼女との情事はゲームに過ぎなかったはずのファンも、俗物のモーよりもはるかにフェンユーに興味をそそられているる。だが、所詮は自分と交わってはならない人種。彼女を遠ざける程度の良心は、ファンの中には残っている。しかし、芸術や大義に命を捧げるわけでもない、ただ生まれついた環境に甘えて世間を泳いでいるだけのファンに共感できる点は少なく、その死にも感情は動かなかった。。。

オススメ度 ★★

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