こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

愛の渦

otello2014-01-17

愛の渦

監督 三浦大輔
出演 池松壮亮/門脇麦/滝藤賢一/中村映里子/新井浩文/三津谷葉子/駒木根隆介/赤堀セリ/柄本時生/信江勇/窪塚洋介/田中哲司
ナンバー 6
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

マンションの一室に集まった“セックスがしたくてしたくてたまらない”男女。恥ずかしさと警戒心と初対面の緊張感で気まずい沈黙が流れ、やがて少しずつ打ち解ける。そしてお互いに気を使って和やかな雰囲気を保とうとするが、時間が経つうちに男女間の好みや容姿などの序列ができ、エゴをむき出しにしていく。映画は衣服を脱ぎ捨てた彼らが心もまた裸になり、本性を露わにしていく過程を描く。相手を選べるが、ワガママを通すわけにもいかない。気に入った相手をほかの者に取られたくない。デブやヤンキーはやっぱり避けたい。己の置かれたポジションと周囲の思惑を測りながら、戦略を練り駆け引きを繰り返す姿が哀しく滑稽で、彼らの心理がリアルに再現される。

2万円を握りしめたニート青年は思い切って門をくぐる。冴えないメガネ女子大生は店長に促されて踏ん切りをつける。初めて参加する乱交パーティ、他にもフリーター、会社員、工員、保母、OL、ヤンキーと様々な男女が集合する。

バスタオルを巻いてリビングルームに集まった8人、世間話を始めた保母とOLに割って入るフリーターと会社員は早々にカップルを誕生させ、デブの工員はヤンキー女にアタックする。ところが、ニートと女子大生はなかなか殻を破れず、言葉が出てこない。若さゆえの自信のなさと羞恥心、それでもどちらからともなくおずおずと声をかけベッドに入る。全裸になって豹変する女子大生の強烈な喘ぎ声が、抑圧していた彼女のリビドーを象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

2回戦が済むと、ニートと女子大生はひそかに気持ちを通わせるようになる。恋なんかじゃない、ただその場限りのセックス。でも体の関係だけで終わらせたくないという思いが募っていく。一方で、他の参加者たちは自分の性欲を満たすことに執心するあまり、つい本音を吐いてしまう。セックスによって解放された自我は、残酷なまでに正直。だが、服を着ればまた理性を取り戻す、そんな人間に対する信頼が心地よかった。

オススメ度 ★★★

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