こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワン チャンス

otello2014-01-18

ワン チャンス ONE CHANCE

監督 デイヴィッド・フランケル
出演 ジェームズ・コーデン/ジュリー・ウォルターズ/コルム・ミーニイ/アレクサンドラ・ローチ
ナンバー 10
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

デブでのろまないじめられっ子、でも歌には自信がある。人前に出るとガチガチに緊張するけれど、その声は聴衆の心をつかんで離さない。にもかかわらず大切な時に失敗したり不運に見舞われたり、幸運の女神はなかなか彼に微笑まない。物語はオペラ歌手を目指す青年が、数々の試練を乗り越えて夢を叶えるまでを描く。目の前に道が開けているのに躊躇してしまう、そんなとき背中を押してくれるのは友人や家族といった身近な存在。誰しも一人では生きていけない、つらい時、苦しい時に支えてもらえる人がいるからこそ、人生は豊かになるとこの作品は訴える。

オペラおたくのポールはいつしかステージに立ちたいと願っているが、ケータイショップのバイトに甘んじる日々。ある日、恋人のジュルスと店長のブラドンに促され素人コンテストに出場、優勝賞金を得てベニスのオペラ専門学校に短期留学する。

世界中から集まったプロ志望の学生の中でポールは実力を認められ、美しいクラスメート・アレッサンドラとのデュエットの練習に勤しむ。石造りの古い建物と縦横に流れる運河を行き交うゴンドラといったオペラの舞台と変わらぬたたずまいのベニス、そこでのロケが非常に官能的だ。数多の若者が胸にあふれる情熱を吐露し、ある時は成功者の歓喜を、ある時は失意の嘆きを聞いてきたであろう歴史的な街並みがプッチーニの名曲とシンクロし、映画の魅力を増幅させていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

しかし、パバロッティに酷評され帰国したポールは、ジュルスとの仲も壊れたまま望まぬ暮らしに身を浸す。それでも彼女に自分の気持ちを伝えるときにラブソングを放吟するなど、歌を捨てきれない。結婚後もたびたびのチャンスをことごとく急病や事故でフイにするポール。そのたびにジュルスやブラドン、両親に励まされ再起を図る。だが、やはり最後は本人がどれだけ熱い思いを抱いているかにかかってくる。そのあたりを肩肘張った根性モノにせず、コミカルに処理したところがに好感が持てた。

オススメ度 ★★★

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