こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ビフォア・ミッドナイト

otello2014-01-20

ビフォア・ミッドナイト BEFORE MIDNIGHT

監督 リチャード・リンクレイター
出演 イーサン・ホーク/ジュリー・デルピー/シーマス・デイヴィー=フィッツパトリック
ナンバー 15
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

作家として成功した男は、十分に息子を愛してやれないのを悔やむ。双子の娘を育てる女は、己の進むべき道を決められず仕事と家庭の両立に悩む。運命のウィーンと必然のパリを経たふたりも中年の域に達し、懐かしい思い出を振り返りつつも“現在”を生きることに一生懸命だ。愛し合っているのはわかっている、だが確かめずにはいられない。言葉尻を裏読みして、意に反して傷つけてしまう。下世話な話題からふたりの未来まで、変わらぬウイットと成熟したエスプリがちりばめられたセリフの数々はこの作品でもさらに洗練され、ふたりが共に歩んだ時間を輝かせていく。

ギリシアの友人宅で休暇中のジェシーセリーヌは、水入らずの一夜を過ごすためにリゾートホテルに向かう。遺跡や史跡、石畳の街並み、沈みゆく夕日を楽しみつつチェックインするが、前妻の元に帰った息子を心配しすぎるするジェシーセリーヌには気に食わない。

出会ったころの魅力は今も褪せていない。再会した時よりもお互いを理解している。それでも、ずっと一緒に暮らして子供もできたのに、相手のすべてを知っているわけではない。ジェシーは息子との関係を口実に米国移住を仄めかし、そんな彼にセリーヌは自分がいかに犠牲を払ってきたかを訴える。これからベッドに入ろうとするまさにその瞬間、ふたりの間に入った深い亀裂。創作欲に裏打ちされた自信に満ちているジェシーと日常に追われ下半身がでっぷりと大きくなったセリーヌ、でもやっぱりセリーヌのほうが口達者なところに女性に対する敬意が感じられた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ふたりにとってこの程度の口論は、実は何度も繰り返してきたことではないだろうか。へそを曲げたセリーヌをロマンチックな作り話でジェシーが宥める。それがユニークならば機嫌を直し仲直りする。その過程は長い長い前戯であり、気持ちを盛り上げるための儀式なのだ。南ペロポネソスの夜は、ウィーンの夜よりもロマンチックだったに違いない。4作目は、離婚した彼らが息子の結婚式で復縁する、なんて設定になるのかな。。。

オススメ度 ★★★*

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