こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!

otello2014-01-23

ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う! The World's End

監督 エドガー・ライト
出演 サイモン・ペッグ/ニック・フロスト/パディ・コンシダイン/マーティン・フリーマン/エディ・マーサン/ロザムンド・パイク
ナンバー 17
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

若き日に成し遂げられなかった夢を、大人になった今なら、昔の親友たちがいてくれたら、きっと達成できるはず。そう信じる中年男は他人の迷惑を顧みず暴走し、やっぱり周囲を呆れさせるばかり。だがその信念は、仲間割れしても、元カノに殴られても、若造と大立ち回りを演じても揺らがない。もちろん町全体が乗っ取られていても。。。物語は、不遇な日々から抜け出すためにかつての友人を集めた主人公が、バカ騒ぎを繰り返す姿を描く。懐かしい町並みはそのままだけど、古いパブはチェーン店になっている。そして友人たちも成熟してしまった。しかし、アル中の彼だけは何物にも縛られないスピリッツを失っていない。たとえ現状が“負け犬”でも、魂の解放こそが人間を人間たらしめるとこの映画は訴える。

学生時代、街中のパブ12軒を一晩で回ろうとして果たせなかった悪友5人組は、20数年後リーダーだったゲイリーに集合をかけられリベンジに挑む。順調に数軒クリアするうちに彼らは町の人々の様子に違和感を覚え始める。

トイレで少年に絡んだゲイリーが反撃されるが、少年はロボットのような直線的な攻撃を仕掛けてくる。酩酊したゲイリーの幻覚なのかと錯覚させるほど現実離れした格闘シーンは、無駄のない洗練された動きの少年と酔っ払いのケンカ殺法がミスマッチを見せ、見事な笑いに昇華されている。首や関節を外され青い血を流す彼らは実はエイリアンに肉体も精神も売り渡してしまった元人間=ブランク。静かに、平和的に、進化の名のもとに侵略者の手先と堕してしまった住民の幸せそうな日常が、自分の頭で考えることを放棄した恐ろしさを示す。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、ブランク化した旧知の人々から勧誘を受けるが、ゲイリーはきっぱりと断り、彼らに追われる羽目になる。次々と襲い掛かるブランクたちを撃退しつつ、それでもパブ巡りはやめないゲイリー。“バカをやる自由”が命よりも大切だと思っている彼の雄姿に、人生のあり方を教えられた。

オススメ度 ★★★

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