こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アメリカン・ハッスル

otello2014-02-03

アメリカン・ハッスル AMERICAN HUSTLE

監督 デヴィッド・O・ラッセル
出演 クリスチャン・ベイル/ブラッドリー・クーパー/エイミー・アダムス/ジェレミー・レナー/ジェニファー・ローレンス/ロバート・デ・ニーロ
ナンバー 25
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

騙したつもりが騙される。周到な準備と相手の出方を読みながら対応を変える当意即妙の駆け引きと、主導権を握っていると思わせて罠に誘導する話術は、もはや芸術品といっていいほどの洗練を見せる。一方で、裏で繰り広げられる泥臭い葛藤が共感を呼ぶ。映画は、司法取引に応じた詐欺師カップルが大物政治家たちにおとり捜査を仕掛け、汚職の証拠をでっち上げる姿を描く。さらにふたりを操る捜査官との奇妙な三角関係はいつしか恋愛に発展し、幾重にもひねりを加えられたプロットは予想のつかない展開。それぞれに与えられた役割を完璧に演じる詐欺師たちはスタイリッシュとは程遠く、欲望にまみれた人間の真実を浮き彫りにしていく。

FBI捜査官・リッチーに逮捕されたアーヴィンとシドニーは、カジノ誘致に絡む市長や政治家を陥れる計画の片棒を担がされる。うまく市長に食い込むが、マフィアの大物・テレジオが噛んでいると知ったリッチーは一網打尽を狙う。

強引な屁理屈で口八丁手八丁のアーヴィンをねじ伏せてしまう妻・ロザリン。注意されたにもかかわらず電子レンジをぶち壊し、マフィアの1人と不倫してもあり得ない論法で自己弁護してアーヴィンに責任転嫁する。この稀代の悪妻をジェニファー・ローレンスが怪演、007のテーマで踊りながら掃除をするシーンは、“奴らが死んでも私は生き残る”と信じて疑わない彼女の精神構造を象徴し、他人の信頼を裏切って生きる人々のスケールの小ささをあざ笑っているかのよう。彼女の圧倒的な存在感の前では、並み居る名優たちも影が薄かった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

危険を察して手を引こうとするアーヴィンたちを脅し、テレジオ逮捕の作戦を進めるリッチー。アーヴィンとシドニーは身を護るため、大勝負に出る。その後はスリリングにギアチェンジし、誰が笑い誰が貧乏くじを引くのか二転三転しながらラストまで疾走する。血も涙もない悪人ではない、浮気はしても継息を愛し良心のかけらは残っている、そんな詐欺師のキャラクターが秀逸だった。

オススメ度 ★★★*

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