こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スノーピアサー

otello2014-02-10

スノーピアサー SNOWPIERCER

監督 ポン・ジュノ
出演 クリス・エバンス/ソン・ガンホ/ティルダ・スウィントン/ジェイミー・ベル/オクタビア・スペンサー
ナンバー 31
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

“持続可能なバランスを保つ”ためには増えすぎた人口を間引かなければならない。歴史上においては飢饉・疫病の大流行や戦争がその役割を果たしていたが、雪と氷におおわれた地上を走り続ける列車では反乱に乗じて適正値に戻そうとする。物語は、氷河期となった近未来の地球でわずかに生き残った人々が21世紀の“ノアの方舟”の中で闘争を繰り広げる姿を描く。特権階級は贅沢を享受し、無産階級は自由を奪われ狭い居住区に押し込められている。人類存亡の危機的状況でも支配・被支配の階級で区別しようとする人間の愚かさが哀しい。

列車最後部で貧しい食料しか与えられない人々は、カーティスをリーダーに待遇改善を求める暴動を起こす。首相を人質にとり列車の支配者・ウィルフォードが住む先頭車両を目指す。

首相が自分に靴を投げつけた男の右手を凍らせてハンマーで砕く残虐な刑罰を与えるシーンがあるが、徹底した弾圧で抵抗を抑えようとする支配者の強固な意志が象徴されていた。この高慢な女をティルダ・スウィントンが嫌味たらしく熱演し圧倒的な存在感を示す。さらにカーティスらが列車を1両ずつ前に進むにつれ、画一的な警備隊、洗脳された子供、享楽にふける人々といったあらゆる体制の反民主主義的な光景が展開する。最尾車両に充満している不平等への不満が怒りに変わる過程は、人間が人間らしく生きようとする本能、それを利用するウィルフォードの狡猾さがユニークだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、最尾車両の人々は労働力を提供しているわけではないのだから、車両を切り離せば簡単に人口問題は解決するはず。子供の供給源なのかもしれないが、他の手段を考えたほうが合理的なのではないか。また、開錠師の朝鮮人が列車を止めようとするが、外部はホッキョクグマには快適でも人間の生存環境ではないことは確か。絶望の先にあるのは絶望だったというオチは皮肉が効いていたが、細部の設定にもう少し説得力がほしかった。。。。

オススメ度 ★★*

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