こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ネルソン・マンデラ釈放の真実

otello2014-02-11

ネルソン・マンデラ釈放の真実 PLOT FOR PEACE

監督 マンディ・ジェイコブソン/カルロス・アウヨ
出演 ウィニーマンデラ/タボ・ムベキ/マシューズ・フォーザ/ジョアキン・シサノ/マイケル・リディーン/ラスティ・エバンス
ナンバー 30
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

南アフリカにおけるアパルトヘイトの撤廃とネルソン・マンデラの釈放は、20世紀における人類の理性の偉大な勝利のひとつであることは間違いない。ところが、民主主義と自由を謳いあげる華やかな政治ショーの裏で、人知れず動いていたのは謎の民間人。映画は、複雑な交渉のキーマンとしてかかわったすべての人々にWin-Win関係が築けるように奔走した男が、何を考えどう動いたかを、本人及び事情を知る政治家・役人・軍人へのインタビューと膨大なアーカイブ映像で再現する。高邁な理想だけでは世界は変わらない、困難にもへこたれず信念を貫き行動した者のみが世界を変える可能性を持つとこの作品は教えてくれる。

アルジェリア生まれのフランス人・オリヴィエは石油取引で財をなし、各国首脳とも強力なコネを作り上げる。1981年に南アを訪れアパルトヘイトの現実を目の当たりにしたオリヴィエは、マンデラ釈放をシラク首相に働きかける。

当時はまだ東西冷戦の最中、米国の後ろ盾を取り付けていた南ア政府とソ連キューバが支援する周辺黒人国家の首脳と直談判する。何度も関係国を飛び回りなんとか妥協点を探ろうとするオリヴィエ。特にナミビアをめぐる南ア‐アンゴラ紛争での捕虜交換が事態を一変させるチャンスとみて、マンデラ釈放につなげようとする。彼の活動資金はすべて自腹、アフリカの政治家・役人たちに会うためには莫大な裏金が流れていたはず。いくら私財を投じたかは明らかにしないが、マンデラ釈放はカネで測れない歴史的価値があると見抜く先見性もまた彼のビジネスマン時代に培った手腕だ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて反アパルトヘイト派のデクラーク大統領の就任やベルリンの壁崩壊などの時代の後押しもあり情勢は急展開、マンデラは拘束を解かれる。だが、マンデラの耳にオリヴィエの名は入っていない。善行は自分で明かすのではない、他人に語られてこそ本物。控えめな態度こそがオリヴィエを伝説にするのだ。。。

オススメ度 ★★★

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