こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

猫侍

otello2014-02-15

猫侍

監督 山口義高
出演 北村一輝/蓮佛美沙子/寺脇康文/浅利陽介/戸次重幸
ナンバー 22
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

いつも眉間に深いしわを刻み、考えをうまく言葉にできないまま胸の内で呟く。剣を握れば天下一品なのに、人情家ゆえに人も動物も斬れない。傘張りで糊口をしのぐ浪人の身、男は「猫の暗殺」を請け負ってしまう。物語はそんな侍が猫を飼ううちに、いつしか情が移っていく過程を描く。なぜか自分に懐いてくる猫を邪険に追い払えない、そして世話をするうちに更なる抗争に巻き込まれ刀を抜かざるを得なくなっていく。腕は立つが押しに弱い、見かけは鋭いが根はやさしい、ちょっととぼけた味わいが魅力的な主人公を北村一輝がさらりと着流すように演じている。

元加賀藩剣術指南役の久太郎は江戸の長屋で貧乏暮らしをしている。ある日、腕前を見込まれた久太郎は、“犬派”のヤクザ組織から、対立する“猫派”親分の愛猫・玉之丞を殺してくれという依頼を受ける。

“猫派”組の屋敷に忍び込んだ久太郎はあっさり用心棒に見つかるが撃退、玉之丞の寝室にたどり着く。だが、玉之丞のつぶらな瞳に見つめられた久太郎は刀を振り下ろせず、殺害を偽装して長屋に連れ帰る。様々ないたずらをされるが殺生を封じた身、結局玉之丞の餌を探し回る羽目になる久太郎。何度も仕官を断られるうちに孤独を深めなかなか心を打ち明けられる友人がいない彼にとって、玉之丞は唯一の支えとなっていく。ところが、映画は決してセンチメンタルには走らず、敵討ちを狙う若侍や猫番の女中、凄腕の用心棒らを久太郎と玉之丞に絡ませ、チープだけれど楽しい雰囲気を作り出すことに成功している。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて“猫派”の反撃が始まり、お互いの愛犬と愛猫が敵の手に落ちる。人質ならぬペット質交換の場で、再び相まみえる久太郎と用心棒。2人の宿命の対決も、息詰まる鍔迫り合いよりも久太郎の玉之丞への思いが前面に出て、勝負にはならない。このあたりの急展開は安っぽさを加速させるが、それでもスクリーンからあふれ出す猫に対する愛情があたたかい気持ちにさせてくれる作品だった。

オススメ度 ★★*

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