こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シネマパラダイス★ピョンヤン

otello2014-02-20

シネマパラダイス★ピョンヤン
THE GREAT NORTH KOREAN PICTURE SHOW

監督 ジェームズ・レオン/リン・リー
出演 リ・ユンミ/キム・ウンボム/ピョ・グァン
ナンバー 39
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

祖国解放の英雄を主人公にした感動大作を制作できるのも、俳優の道に進む教育を受けられるのも、まともな家に住みきちんとした食事をとれるのも、みな偉大な指導者のおかげ。自分たちが暮らしているのは地上の楽園、生きる目的と充足感を与えてくれた恩返しをしたいと思う映画関係者は、最高の芸術で彼を喜ばせることを至上命題にする。よき映画を作ればよき愛国者になれる、カメラはピョンヤンの演劇映画大学に通う2人の学生と、金正日の寵愛を得た映画監督の日常に迫る。思い通りにならない現実に直面すると愚痴が出る。だが、人間的な一面を見せるシーンですら慎重に言葉を選び、国家や体制の批判と解釈されかねない単語は絶対に口にしない。そんな彼らの振る舞いに北朝鮮の真実の一部が透けて見える。

俳優の基礎を学ぶウンボムとユンミ。何度演技にダメだしされてもへこたれないウンボム、舞踊が身につかず教官にダイエットしろと言われるユンミ。また、映画監督のピョはエキストラ出演する人民軍兵士の態度に不満を漏らす。

ウンボムは両親とも高名な芸能人、ユンミは科学者の娘で、2人ともエリート層の出身。日本で報道されるような浮浪児や飢餓などとは縁がなく、物質的にも恵まれた環境で若者らしい夢を抱ききらめく青春を謳歌している。ピョも潤沢な援助と大規模な撮影所で映画を撮っている。すべては将軍様のためという迷いのない意志はすがすがしく、明確な目標に日々邁進するのは人生を豊かにする近道だと彼らは訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

もちろん彼らが特権階級に属し、その地位を維持するのに神経を使っているのは映像から伝わってくる。そして、讃歌を高唱し街中に掲示されたスローガンに賛同する姿は、将軍様に本気で心酔しているかにも思える。生き残る知恵なのか、長年の情報操作で洗脳されているのか、この作品からはうかがえない。それでも北朝鮮支配層の特殊な感情だけはリアルに再現されていた。3代目となった現在と比べると、むしろ“あの時代のほうがよかった”と朝鮮人民は懐かしんでいるかもしれない。。。

オススメ度 ★★★

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