こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

人生はマラソンだ!

otello2014-02-21

人生はマラソンだ! De Marathon

監督 ディーデリック・コーパル
出演 ステファン・デ・ワレ/マルティン・ファン・ワールデンベルグ/フランク・ラマース/マルセル・ヘンセマ
ナンバー 40
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

最初は数分で息が上がった。だが、明確な目標と計画、励まし合う仲間のおかげで少しずつ体が苦痛に慣れてくる。やがて軽快な動きを取り戻すと、練習後のさわやかな疲労感や日常の自己管理すらが病み付きになる。物語は会社の危機を救うためにマラソンに挑戦する4人のオッサンたちの奮闘を描く。酒やタバコを常習し、もう何十年も運動していない彼らが徐々に引き締まっていく過程は、流した汗は嘘をつかない証明。でも根性だけでは続かない、夫婦や親子関係の崩壊と修復、新しい恋が彼らのモチベーションとなっていく。人生に真剣に対峙した経験のない男たちが初めて自分の足で立ち上がる姿に切迫感はなく、そのユルさが心地よい。

自動車修理工場を経営するギーアは、滞納した税金を払うために従業員3人と共にマラソン完走が条件の出資話をスポンサーとまとめる。元プロランナーの指導の下、トレーニングを始めるが、みなプライベートに問題を抱え身が入らない。

まともに仕事をしているのはユースのみという工場を立て直すには、マラソン大会に出るよりも従業員を真面目に働かせればいいのだが、人の好いギーアはなかなか厳しい言葉を口にできない。むしろ移民や障碍者でも友人のように大切にしているからこそ従業員たちもギーアの決定に付き合う。ドライな雇用契約ではなく、労使が対等でなおかつ濃密な信頼、そのあたりが独特のほのぼのとした空気を生み、職場と家族と生活を守る共通の目的が彼らを駆り立てる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

末期の食道ガンを宣告されたギーアは病状を隠しマラソン本番に臨み、走ることで反抗期の息子にオヤジの背中を見せる。他の従業員もそれぞれの困難を乗り越えてレースに出場する。そこはお約束の展開と思わせるが、さらにひとひねり加えたアイデアが秀逸だった。何より、懸命に努力する楽しさと達成感を学んだはずの従業員が相変わらずグータラなのが、そう簡単に変われるものではない人間の本質を衝いていた。

オススメ度 ★★★*

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