こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

とらわれて夏

otello2014-02-22

とらわれて夏 LABOR DAY

監督 ジェイソン・ライトマン
出演 ケイト・ウィンスレット/ジョシュ・ブローリン/ガトリン・グリフィス/トビー・マグワイア
ナンバー 41
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

愛に見捨てられた女と愛に裏切られた男。偶然出会ったふたりは、お互いが自分の心から抜け落ちた大切な一部分であると直感的に悟る。やがて女は男の優しさに惹かれ、男は女の絶望を癒そうとする。物語は逃亡犯を匿った母子家庭が束の間“完璧な家族”になり、孤独から解放される姿を描く。家やクルマの修理・補修から料理・洗濯・掃除など家事一般、さらに息子のキャッチボール相手まで、長年不在だった“保護者”の役割をこの男がはたし、新鮮な空気をこの家に送り込む。そして傷ついた彼を受け入れることで彼女たちもまた失った時間を取り戻していく。脅えや不安が生きる喜びに変わっていく感情をケイト・ウィンスレットが濃やかに演じていた。

うつ気味の母・アデルと買い出しに行ったヘンリーは、フランクと名乗る男に助けを求められる。フランクは脱獄囚で警察に追われていたが、彼の紳士的な振る舞いにアデルもヘンリーも警戒を解いていく。

TVで報道されている凶悪な殺人犯とは正反対の物静かで働き者のフランク。まだ手術痕から出血しているのにアデルたちに迷惑をかけまいと最大限の気を使っている。彼と触れ合ううちにアデルの症状も改善し、ヘンリーも“理想の父親”の面影を見る。フランクもアデルたちに己が持ちえなかった“家庭”を投影している。そんな幸福な日々がいつまでも続くわけはない、それが分かっているからこそ3人ともうたかたの幻想に酔い、疑似家族を壊さないようにする。協力してピーチパイを作るシーンに3人の複雑な思いが交錯し、陰影の濃い映像が彼らの未来を暗示していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

もはや離れては生きていけない、フランクとアデルはカナダへの逃避行を決意し準備を始める。一方ヘンリーは街で知り合った少女から“大人の事情”を吹き込まれ動揺したりする。そのあたり、映画は離婚や再婚、継父母といった親の事情に振り回される子供の繊細な心情も反映させる。3人の運命が再度交わる後日譚も人生の深い味わいを漂わせ、涙腺を刺激した。。。

オススメ度 ★★★*

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