こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

新しき世界

otello2014-02-28

新しき世界 新世界

監督 パク・フンジョン
出演 イ・ジョンジェ/チェ・ミンシク/ファン・ジョンミン/パク・ソンウン/ソン・ジヒョ
ナンバー 48
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ほんの小さなミスが命取りになる、いや、ミスをしていなくても極秘情報は洩れ、その先に待っているのは凄惨なリンチと死。安全を保障してくれるはずの管理者からは無理難題を突き付けられ、今や倒すべき“敵”が最良の友となっている。もはや頼れるのは自分一人、孤独に押しつぶされそうになりながらも男は生き残る決意をする。物語は、ヤクザ組織の幹部に出世した警察の潜入捜査官が後継者争いに巻き込まれ、苦渋の決断を重ねていく姿を描く。もう後戻りできないほどの深みにはまりこんでしまった、殺さなければ殺される。裏切りと欺瞞、駆け引きと暴力、怒りと哀しみ、それらが充満した映像は圧倒的な感情のうねりとなって主人公の苦悩を代弁する。

ヤクザが支配する企業グループの会長が事故死、チョン・チョンとジュングが後継に名乗りを上げる。チョン・チョンの腹心となった潜入捜査官のジャソンはこの機に組織を弱体化させるよう、上司のカンに命令される。

カンはチョン・チョンに協力を持ちかけるがチョン・チョンは拒否、逆にチョン・チョン配下のハッカーが警察のデータベースに侵入して潜入捜査官に関するファイルを入手する。このあたり、ジャソンを手駒のひとつとして扱いヤクザ相手に仁義なき戦いを挑むカンと、あくまで極道のポリシーを貫き義理人情に篤いチョン・チョンは対照的。さらにジュングを焚き付け全面戦争を仕掛けさせるなど、狡猾なカンの奸計にヤクザだけでなくジャソンも追い詰められていく。己が送り込んだ部下に「ヤクザとして生きろ」などというカンに、警察が守る法や命とはなんなのかを考えさせられた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ジャソンの正体がチャン・チャンに知られる一方で、カンがとり込んだ大物ヤクザを神輿に乗せる計画が進む。周りはすべて敵、カンの援護も期待できない状況で、ジャソンは起死回生の秘策に出る。たった一つ信じられるものがあるとしたら、夢中でドスを振り回していたころの思い出。そんなジャソンの心の痛みがいつまでも重苦しくのしかかる作品だった。

オススメ度 ★★★

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