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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

相棒 劇場版III 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ

otello2014-03-07

相棒 劇場版III 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ

監督 和泉聖治
出演 水谷豊/成宮寛貴/伊原剛志/釈由美子/風間トオル/六平直政/宅麻伸
ナンバー 46
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

川に潜み密林を進み格闘術を学ぶ。軍隊式訓練施設に志願した若者たちは限界まで己の肉体を追い込み、祖国防衛の理想を共有する。そんな、絶海の孤島で起きた死亡事故にはどこか不自然さが残っている。物語は、現場に送り込まれた捜査員たちと閉ざされた世界で生きる元自衛官たちとの虚々実々の駆け引きを描く。彼らの背後で見え隠れするのは、国家を揺るがしかねない陰謀。もはや一警察官の手に負える事案ではなく、警察庁と防衛省のメンツをかけた水面下の綱引きに族議員や右翼実業家も絡んでくる。きっかけは1人の死、だが次から次へと畳み掛ける展開は刑事ドラマのスケールをはるかに超えている。狂信者が資金援助を得て暴走すれば愛国者を名乗るテロリストになるかもしれない可能性がリアルだった。

八丈島沖の小島・鳳凰島の民兵組織の隊員が馬に蹴られた死体で発見される。形式的な調査を命じられた杉下と甲斐は状況に不審を持ち、隊員たちに聞き込みを続ける。民兵組織の隊長・神室には生物兵器製造の疑いがかけられていた。

杉下たちはさらに応援を呼び徹底的に調べる。すると民兵組織を援護する防衛省幹部や議員が動きだし、自衛隊特殊部隊を使って杉下らの排除にかかる。このあたりの警察と自衛隊の微妙な関係、法に縛られる自衛隊の行動規範など、一進一退のゲームのように目まぐるしく攻守が変わり、杉下もいつもの調子は出ない。同じく行政機関である自衛隊に邪魔をされるという省庁間の縄張り争いに巻き込まれた杉下たちは、所詮組織の歯車の一つに過ぎないと思い知らされる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

それでも捜査員の自分にできることは何なのか、杉下は自らに問うかのごとき決意で鳳凰島に再上陸、凶器を見定め動機を推定し事実を推理し、隊員の死を殺人事件として立証する。映画らしい大仰な仕掛けに振り回されすぎた感もあるが、中国の軍事的脅威が増す中で“平和ボケ”と“国防という名の流行病”の間で揺れる現代日本の現状を鋭く切り取っていた。

オススメ度 ★★★

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