こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

大人ドロップ

otello2014-03-10

大人ドロップ

監督 飯塚健
出演 池松壮亮/橋本愛/小林涼子/前野朋哉/馬渕英俚可/美波/香椎由宇
ナンバー 16
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

恋と呼べるほど胸の高鳴りを覚えているわけではない、でも美しい少女に成長した幼馴染が頭から離れない。一方で彼女の親友からはいつもからまれ、じゃれあっている。そして、自分の親友には少女との仲介をせがまれる。物語は、男女の思惑が交錯する四角関係の要にいる男子生徒のひと夏の体験を通じて、“大人になる”とはどういうことなのかを考察する。放課後の何気ない時間、下校時の他愛ない会話、暇を持て余した長い夏休み、初めての冒険と告白。傷つけているのに気が付かず、相手へ気持ちを押し付け、思い通りにならない現実に悶々とする、そんな青春の苦悩と友情のきらめきが凝縮された映像がまぶしい。

高3の由はクラスメートの始から杏とのデートを取り持ってくれと頼まれる。由は杏の仲良し・ハルにダブルデートを持ちかけるが、杏への小細工がばれ怒らせてしまう。その後、由と杏は疎遠になったまま、杏は行先も告げず学校をやめる。

杏に送った謝罪の手紙の返信に押された消印から彼女が和歌山にいると見当をつけた由は、始と2人で列車に乗る。そこで、杏がひとりでは対処しきれないくらい深い葛藤を抱え、悩みながらも哀しみを抑えて気丈に振る舞っていたのを知らずに、彼女の心中を弄んだ愚かさに思いあたる。安穏とした日常にどっぷりつかった由、高校を中退するほどの切迫した事情を背負う杏。大人になると何が変わるのかかわからない由と、大人にならざるを得なかった杏の対比が鮮やかだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

押しつけがましい始とチャーミングなハルは、感情をうまく表現できない由と杏の、ある意味“表の部分”でもある。由は始を介して杏に思いを伝え、杏は由と付き合うハルに己を重ねているのだろう。本当は好意を寄せていて、声をかけたいのにいざふたりきりになると妙に意識してしまう。杏が高校を辞める前に由が「行くな」と言っていれば、ふたりの運命は肝油ドロップを一緒に嘗めたころの延長線上をなぞっていたかもしれない。。。

オススメ度 ★★*

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