こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

偉大なる、しゅららぼん

otello2014-03-12

偉大なる、しゅららぼん

監督 水落豊
出演 濱田岳/岡田将生/深田恭子/渡辺大/貫地谷しほり/佐野史郎/笹野高史/村上弘明
ナンバー 58
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

人の心を覗きこみ、操り、時に物理的な作用を及ぼす。それは先祖代々伝わる神から与えられた力。その能力で代々町を支配してきた一族の元に修行に訪れた少年は、珍奇な超能力バトルを体験する。能力者対能力者の激突は暴力的な血みどろの戦いとは程遠い牧歌的なのどかさが漂い、己の未来を切り開こうとする若者たちの葛藤もまた切迫感に乏しい。映画は、千数百年の昔から続く家系の闇や町の裏の顔を暴くといったおどろおどろしいミステリーやサスペンスには最初から背を向け、能力者たちの少しずれた言動に焦点を当てる。赤いガクランで登校する2人の高校生が、彼らが常識を超越した存在であることを象徴していた。

日出家の血を引く涼介は琵琶湖畔に城をかまえる本家に下宿、次期当主の淡十郎と共に高校に入学する。2人は日出家と敵対する棗家の跡取り・広海と同じクラスになり、淡十郎は校長先生の娘・沙月を巡って広海と恋のさや当てを演じる。

町を見下ろす天守閣に住み、いまだ小舟や馬を移動手段に使う日出家。恐ろしく時代錯誤的な風習が残る城内だけでなく、淡十郎や姉の清子ら日出家の人々の立ち居振る舞いに涼介は面食らう。この本家姉弟の、他を圧倒する特異な能力と人を人とも思わないキャラクターが物語の世界観を際立たせていた。さらに、高貴な血筋の「殿様」「お姫様」として育てられので感情の吐き出し方が分からない。特に、“沙月が好きなのは広海”と聞いてのた打ち回ったあげく広海に直談判に行く淡十郎の姿は、世間知らずゆえの不器用ぶりがコミカルだ。淡十郎も思春期の少年、定められた運命を変えるきっかけが“女”であるあたり、きわめて人間的だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ところが、城に乗り込んできた校長が日出家に立ち退きを迫る。校長は日出、棗双方の力を上回る能力の持ち主で、古から連綿たる両家の存続が危ぶまれる。このあたりの展開はやたらまどろっこしくて、その後はオリジナリティに欠けるCGの連続と意外な人物によるとってつけたようなどんでん返し。前半のゆる〜い空気が最後まで引き締まらなかったのが残念だ。

オススメ度 ★★

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