こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アナと雪の女王

otello2014-03-18

アナと雪の女王 Frozen

監督 クリス・バック
出演 クリステン・ベル/イディナ・メンゼル/ジョナサン・グロフ/サンティノ・フォンタナ/ジョシュ・ギャッド
ナンバー 63
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

手のひらから出る不思議な力で雪と氷を自在にコントロールする少女。時にそれは不幸をもたらし、気持ちが高ぶると制御できなくなる。そして、人目に触れないように両親によって監禁された彼女は、奔放に育った妹にどう接していいかわからないまま成長する。物語は、特殊な能力を授かったのに、適切に使いこなす術を教える大人に恵まれないまま故郷を追い出された娘の悲劇を描く。王位を継承する立場にあるのに国民を幸せにするどころか氷に閉ざしてしまい、己の幸せを求めるのも許されない。人里離れた山中で初めて抑えてきた感情を解放し、ひとり思いのままに生きると宣言するシーンは、歌声とメロディの美しさゆえにより大きな哀しみを伴っていた。

妹のアナに氷雪細工を作って遊んでいたエルサは誤ってアナを傷つける。危険を覚えた父王はエルサを城内に閉じ込め、記憶を消したアナにも会わせない。やがて父が死に、成人したエルサは女王として戴冠式を迎え日の目を見る。

一方アナは一目ぼれした隣国の王子・ハンスと結婚の約束を交わす。エルサに報告するが却下されて抗議するうち、ふとしたはずみでエルサの “凍らせる能力”が暴走する。エルサが祖国を氷雪で覆うのは、今まで我慢を強いられてきた不満と自分をフリーク扱いした世間への復讐。胸に渦巻く怒りや嫉妬、鬱屈した被害者意識をエネルギーにすることでしか正気を保てない。おとぎ話の魔女は本来こうした人々だったはず、決して根っからの悪人だったわけではない。彼女の朗唱は差別や無理解の犠牲者たちの魂の叫びなのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

国を元通りにするためにエルサが身を隠す北の山に向かったアナは、道中・クリストフという青年と出会い助けを求める。真実の愛こそが、凍った心臓を動かし凍った心を解かすと知ったアナは、エルサとの深い溝を埋め再び幼き日の仲良き姉妹に戻ろうとする。ただ、アナの氷像はそのまま残したほうが、自己犠牲を称え強欲を慎み偏見を戒める教訓になったと思うが。。。

オススメ度 ★★*

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