こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウォルト・ディズニーの約束

otello2014-03-24

ウォルト・ディズニーの約束 SAVING MR.BANKS

監督 ジョン・リー・ハンコック
出演 トム・ハンクス/エマ・トンプソン/コリン・ファレル/ポール・ジアマッティ
ナンバー 68
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

身の回りに起きるあらゆる事象に眉根を寄せる。他人の言葉は疑ってかかり、提案はことごとく拒絶する。己のルールが通らないと不機嫌になる。気難しい上に現実世界との交わりを避けている童話作家。彼女は自ら創作したおとぎ話の中でしか自由になれないのだろう。それは不遇な最期を遂げた父への償い、酒に溺れ母を悲しませたけれど、自分にだけはとても優しかった彼の幸せを叶える唯一の手段だ。そんな、空想の王国に君臨する独裁者のようなヒロインをエマ・トンプソンが小憎らしげに演じる。物語は名作童話の映画化交渉を通じ、原作者の頑ななこだわりを描く。原作はまさに彼女の分身、ワンカット・ワンフレーズたりとも疎かにさせない態度にクリエーターの神髄を見た。

メリー・ポピンズ」映画化に熱心なウォルトは著者のパメラをハリウッドのスタジオに招待する。打ち合わせを録音させ脚本にケチをつけ楽曲にダメ出しするパメラにスタッフは音を上げるが、ウォルトは根気よく付き合う。

並行して語られるパメラの少女時代。いつも家族を楽しませてくれる父が大好きだった彼女は、父の苦悩に気づかず、無邪気に彼を信じていた。父と娘のかけがえのない時間は人生でいちばん満ち足りていたのに、突然終わってしまう。美しくも切ない思い出、パメラをその過去を克服するために「メリー・ポピンズ」を書いたはずなのに、いつしか彼女自身ががんじがらめにされている。映画化は、登場人物に具体的なイメージを与えて、父のトラウマからパメラを解放することなのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて完成した「メリー・ポピンズ」の披露上映で、パメラは涙を流す。ペンギンのアニメは気に食わないが、形と色彩を得た世界観とミュージカルナンバーを歌い踊るキャラクターは予想以上に想像力を刺激し、躍動感と喜び、そして希望を伝えてくる。何よりもパメラが願ったMrバンクス、つまり父の救いになっている。愛する人へ思いは必ず届く、そう感じさせる作品だった。

オススメ度 ★★★*

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