こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

白ゆき姫殺人事件

otello2014-04-01

白ゆき姫殺人事件

監督 中村義洋
出演 井上真央/綾野剛/菜々緒/金子ノブアキ/谷村美月/蓮佛美沙子/貫地谷しほり
ナンバー 75
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

事実を捻じ曲げて解釈されTVで公開された人物評は、ネット上で無責任に尾ひれをつけられた噂になり、プライバシーすら丸裸にされる。一度“標的”を定めたら彼らは容赦なく悪口を繰り返し、追い込んでいく。匿名という安全地帯から中傷誹謗の矢を連射する一般市民の悪意、それを利用して視聴率を稼ごうとするTVマン、物語はひとつの殺人事件が提起する、先入観の恐ろしさを描く。見たいものしか見ない浅はかさ、便乗して“祭り”参加している意識を持つ浅ましさ、でも少しだけ善意も残っている。そんな情報化社会の危うさなかでは、無力な個人は真実を語るチャンスも与えられず息をひそめているしかないのか。可視化された証言者の言葉に漂う違和感が、人間の心の深淵を覗き込むような不快感を醸し出す。

化粧品会社の美人社員・典子が惨殺される。彼女の後輩から情報提供を受けたワイドショーディレクターの赤星は、関係者へのインタビューを続けるうちに事件後行方不明になった典子の同僚・美姫が犯人と確信、オンエアされた彼の取材テープは高評を得る。

業務上知りえたネタを逐一ツイッターに流す赤星。この程度の倫理規定も守れない三流ディレクターの彼は、初めてのスクープに冷静さを失い、自分が警察の捜査より一歩進んでいると思いあがる。そして被害者の典子=気立てのいい美人、姿を消した美姫=不気味なネクラ女のレッテルを張る。嫉妬と憤怒に駆り立てられても爆発させることができず、いつも伏し目がちで口元を少し歪めて感情をため込む美姫を井上真央がリアルに演じていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

映画は中盤まで赤星の取材に基づく「美姫像」を観客に見せるが、これはあくまで歪曲した証言をもとに赤星が再構築した美姫の虚像。一方で、終盤では追い詰められた美姫が書いた“遺書”を元にした彼女の半生が再現される。しかし、そこに綴られた美姫の苦い思い出については赤星は知らないはず。何らかの手段で赤星に“遺書”を読ませて、赤星の視点で美姫の過去を映像化しなければおかしいのではないだろうか。。。

オススメ度 ★★*

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