こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ポリス・ストーリー レジェンド

otello2014-04-09

ポリス・ストーリー レジェンド 警察故事2013

監督 ディン・シェン
出演 ジャッキー・チェン/リウ・イエウー/ジン・ティエン
ナンバー 80
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

拳や肘から繰り出される強烈な打撃とてこの原理を応用した組技に、呼吸は乱れ顔面は歪み関節はきしむ。コミカルな動きは一切ない格闘シーン、映像は肉体が上げる悲鳴をリアルに再現する。前作で“アクションを卒業”したはずのジャッキー・チェンだが武術家のスピリッツはいまだ健在、今回は人質籠城事件に巻き込まれ犯人に協力を余儀なくされ葛藤する刑事に扮する。守るべきは人の命というポリシーゆえに被害者のみならず犯人の気持ちすら理解しようとする優しさも持つが、仕事のために家族を犠牲にしてきたツケも払わされる。そして犯行の目的が明らかになるにつれ、苦悩する男たちの背中が哀愁を帯び始める。

ウーが経営するクラブに呼び出された刑事・ジョンはもめごとの仲裁に入ったところを殴られ失神、緊縛される。その間にウーは数人の客を檻に閉じ込め店に立てこもり、服役中のウェイの身柄を要求する。人質の中にはジョンの娘・ミャオもいた。

ジョンはウーと警察の仲介役として交渉にあたるが、一方でクラブを包囲した警官隊は突入のタイミングをうかがっている。ウーとウェイの接点が見えず、なぜ自分がウーに狙われたのかもわからないジョン。彼が犯人グループと戦いながら謎を解いていく過程はミステリアスかつスリリング、香港を離れ北京に舞台を移した「ポリス・ストーリー」は今までの作品とは別の顔を見せる。冒頭、こめかみに銃口を当てて引き金を引くジョンの苦痛の表情が、愛する者を失って生きるつらさを象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ウーの真意は、妹がどうして死んだのかジョンや他の当時者の口から聞きたかっただけ。このあたりの動機はもはや狂気じみているが、それほどウーは妹を大切にしていたのだろう。ところが、妹を追い詰めた者への憎しみは皮肉にも彼自身に返ってくる。そんなウーの絶望はジョンの喪失感にも通じ、映画には愛強き彼らの悲哀に満ちた人生が凝縮されていた。

オススメ度 ★★★

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