こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

百瀬、こっちを向いて。

otello2014-04-11

百瀬、こっちを向いて。

監督 耶雲哉治
出演 早見あかり/竹内太郎/石橋杏奈/工藤阿須加/ひろみ/向井理
ナンバー 61
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

傷つけられることには敏感なのに、傷つけていることには鈍感。天真爛漫な笑顔の陰で嫉妬に燃え、強引なほどの押しの強さの裏に純粋な思いを秘めている。そんな、きらめいてはいるが壊れやすくもあるガラス細工のような感性を持つ少女を好きになってしまった自己評価の低い少年は、翻弄され、イジられても彼女を見つめ続けている。物語は、先輩の二股を隠すために少女の偽恋人に仕立て上げられた高校生が、戸惑い緊張しつつも生まれて初めて“彼女のいる日常”を体験する姿を描く。つないだ手のぬくもり、居眠りの頭を乗せた肩の心地よさ、腕に密着した肌の感触、それらに新鮮な驚きを覚えつつも気持ちを抑えきれなくなる過程が切ない。

学校一の美女・節子と交際する宮崎先輩に呼び出されたノボルは、隣のクラスの女子・百瀬と付き合っているフリをしろと頼まれる。必要以上にノボルとのアツアツぶりを周囲に見せつける百瀬に、いつしかノボルも惹かれていく。

宮崎の歓心を買いたい一心でノボルの恋人を演じる百瀬。45%の恋人たちは2年以内に破局するという統計を信じるとノボルに語ってはいるが、そのテンションの高さは叶わぬ恋の裏返し。貧しい家に帰れば4人の幼い弟妹の世話もしなければならない百瀬に対し、家業の再生にカネが要る宮崎は裕福な家庭の節子とは絶対に別れないとわかっている。百瀬の心を知ってしまったノボルは彼女を振り回す宮崎が許せないが、それ以上に自分自身がつらくてたまらない。三人三様の複雑で入り組んだ感情が交差するが、相手の心情を慮るまでには至らない未熟さがリアルだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

映画は、大人になったノボルが久しぶりに帰郷、節子と再会して昔語りをするスタイルを取る。ノボル・百瀬・宮崎の3人が秘密を共有しそれぞれ苦悩していたのに、ひとり蚊帳の外で幸せを謳歌していたかに見えた節子が一つだけ小さな仕返しをしていた事実。節子のしたたかさに、女の本性が凝縮されていた。

オススメ度 ★★*

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