こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

聖者の午後

otello2014-04-14

聖者の午後 CORES

監督 フランシスコ・ガルシア
出演 アカウア・ソル/ペドロ・ジ・ピエトロ/シモーネ・イリエスク
ナンバー 86
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

世の中は好景気に沸いているのに恩恵にあずかれない。大学を卒業していなければきちんとした職にもありつけず、セコい悪事に手を染めてその日暮らしを続けている。サッカーW杯と五輪開催を控えたブラジル、カメラは発展に乗り遅れたもう若くない男女3人の日々を追う。いや、乗り遅れたのではなく、そもそもスタートラインにも立てなかったのだろう。貧困に苦しんでいるわけではないが、夢を持つことを知らず、向上心もなく、ただ怠惰な日常を繰り返すばかり。映画はそんな希望を失った世代のリアルな実態に迫る。モノクロの深い陰影が彼らの抱える閉塞感を代弁する。

薬局店員のルイス、熱帯魚店で働くルアラ、タトゥーショップを営むルカはいつも3人でつるんで漫然と毎日を送っている。ある日、ルイスは薬局をクビになり、ルアラは客に口説かれ、ルカの祖母が倒れる。

“死ぬより生きるのが怖い”というルイス。本来ならルアラと結婚し子供でもいれば、考えるより先にがむしゃらに働かなければならなかったはず。だが、きっかけもなく時間が過ぎ、気が付けばやり直しが難しい年齢になっている。そしていまだに将来の展望が開けない。祖母の年金をあてにしているルカはアーティストを気取りむしろ労働を拒否しているかのよう。堅実なルアラはパイロットの言葉に少しだけ外の世界を意識する。結局、彼らを縛り付けているのは身の回りの出来事以外に対する無関心。知識欲や好奇心などはなからなく、ドライブ旅行の出鼻で故障に見舞われどこにも行けずに戻ってくる姿に彼らの人生が凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて豪雨が街を襲う。楽しい思い出のない過去とうだつの上がらない現在を洗い流そうとするのか、3人は土砂降りの雨の中にデッキチェアを出す。でも“自分さがし”すらしようとしない彼らは、きっと何も変わらない。起承転結のないぬるいドラマは、そのまま彼らの心に巣食う漠然とした不安を象徴していた。

オススメ度 ★★

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