こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

六月燈の三姉妹

otello2014-04-25

六月燈の三姉妹

監督 佐々部清
出演 吹石一恵/徳永えり/吉田羊/津田寛治/西田聖志郎/市毛良枝/井上順
ナンバー 96
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

知っておいてほしいことがある、秘密にしておきたいこともある。別れたいのか復縁したいのか、恋や結婚はもうこりごりだけれどひとりは寂しい。そんな人々が小さな家で繰り広げるドラマは絶妙の間と気の効いたセリフで彩られ、思わず笑いを誘いつつも人情に訴える優しさも持つ。道に迷って途方に暮れている時、壁にぶつかって弱気になった時、いつもそばにいてくれるのは家族。仲がよさそうに見える両親と三姉妹、みな各々の事情を抱えて祭りの夜にむかって奔走する。映画は陽光あふれる7月の鹿児島を舞台に、彼らが新しい未来に一歩踏み出そうとする姿を追う。誰もが誰かに関心を示し、解決できない悩みは一緒に考える。他人から心配されれば人は強くなれるのだ。

六月燈を控えた商店街の和菓子屋に、離婚を決意して戻ってきた次女・奈美恵の夫・平川が東京から押しかけてくる。奈美恵の実家は母も長女の静江も離婚経験者、三女の栄も婚約破棄の過去があり、男に対する期待をなくしていた。

店を手伝ううちにいつの間にか奈美恵の両親に頼りにされている平川。この家の人々は人間関係に鷹揚なのか、平川を追い返したりせずごく自然に受け入れている。平川も体を動かすのが楽しそう。女たちの発言力は大きく、来る者は拒まずの気風が根付いているのだろう、彼女たちのあっけらかんとした結婚観はむしろ軽快ですらある。一方で親子や姉妹の愛情も濃やかに描きこまれ映像は繊細かつコミカルで、互いに気を使いながらも三姉妹が本音をぶつけ合う夜の散歩シーンは、彼女たちの生き方が濃密に反映されていて、結局最後に頼れるのは肉親であると思い出させてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて何度も実家に顔を見せる平川に奈美恵の決心もぐらつき始める。不倫を清算した栄は静江の協力で自分の夢に向かって歩き始める。ひとつひとつの出来事は些細かもしれない、でもその積み重ねが豊かな人生につながると教えてくれる作品だった。

オススメ度 ★★★★

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