こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

怪しい彼女

otello2014-04-26

怪しい彼女

監督 ファン・ドンヒョク
出演 シム・ウンギョン/ナ・ムニ/ジニョン/イ・ジヌク/ソン・ドンイル/ファン・ジョンミン/パク・インファン
ナンバー 97
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

パーマ頭ですぼめた唇にガニ股歩き、孫の手を片手に歌を聴く。礼儀知らずの若者に毒づき、乳児を抱えた母に子育て論をぶち、ストーカーには生魚を突きつける。言葉や態度は口うるさい老人のまま、不思議な出来事で瑞々しい外見を手に入れたヒロイン。彼女を演じるシム・ウンギョンが、あらゆるディテールまで食えない老婆の仕草や癖・話し方を再現し、大いに笑わせてくれる。最初は戸惑い、次に変化を受け入れ、もう一度別の人間としてやり直そうとする彼女は、過去を取り戻すために臆せず自分のやりたかったことを行動に移す。もはや失うものはなにもない、そんな覚悟を決めた生き方が凛々しい。

古希を過ぎても意気軒昂なマルスンは、ふと入った写真館で若返りの魔法をかけられる。彼女はドゥリと名乗って古い友人宅に下宿、歌唱力を見込まれて孫のジハのバンドに加わり、音楽プロデューサーの目に留まる。

一人息子を自慢の種に、老人カフェでは些細な原因で掴み合いのケンカをし、家では嫁をいびり倒すマルスン。苦労を重ねた彼女には現役世代は歯がゆくて仕方がなく、周囲から鼻つまみ者扱いされていてもまったくひるまず悪態をつき続ける様はまさに意地悪ばあさんだ。映画は、彼女の“本当の姿”を冒頭で見せて、“20歳の肉体に宿る70歳の魂”のギャップを強調する。でもドゥリとなってもかわいいジハには協力を惜しまない。ステージに立つのも己のためよりジハの夢を叶えてやりたいという“老婆心”、それでもイケメンのプロデューサーに胸をときめかすあたりがキュートだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて少しずつ近しい人々には正体がばれていく。その過程で、息子に“やっぱり同じ人生がいい”と告げる場面は、母親にとってはどんなに辛くても子供を産み育てる喜びに勝る経験はないと訴えている。魔法にかかっていても魔法が解けても変わらないのは家族への愛、老婆に戻ったマルスンがチャーミングに見えた。。。

オススメ度 ★★★★

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