こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダーク・ブラッド

otello2014-05-01

ダーク・ブラッド Dark Blood

監督 ジョルジュ・シュルイツァー
出演 リヴァー・フェニックス/ジュディ・デイヴィス/ジョナサン・プライス/カレン・ブラック
ナンバー 101
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

滅ぼされた人々の亡霊なのか、死にゆく者の怨念なのか。世界の終りを予見してシェルターを用意する青年にはどこか死の影が付きまとい、不吉な運命を予感させる。それは19世紀に白人から迫害を受けて祖父伝来の土地を奪われ、20世紀には核実験によってわずかに残された安住の地さえも汚染されてしまったアメリカ先住民の呪い。7/8は白人だが1/8に先住民の“汚れた血”が流れている彼自身のアイデンティティには、相反する価値観が“血”のレベルで刷り込まれている。物語はそんな主人公の元に迷い込んだ俳優夫婦が、自らの流儀を押し付けようとして逆に追い詰められる姿を描く。拝金主義を象徴するような俳優が厳しい自然の中の孤独な魂に触れたとき、ふたりはまったく理解し合うことなく反発する。その過程は物質文明の強烈な批判、環境と人間の営みを破壊して成長してきた近現代への警告なのだ。

ドライブ旅行中に砂漠でクルマが故障したハリーとバフィ夫婦は、人里離れ荒れ地に1人で住むボーイという若者に助けを求める。だが、バフィを気に入ったボーイは夫婦を軟禁状態に置き、なかなか帰そうとはしない。

露骨な嫌悪感を示すハリーに対し、バフィはハリーにない魅力を持つボーイにあいまいな態度を取り続ける。妻と死別して以来初めて目の前に現れた女にボーイの気持ちはエスカレートしていく。このあたり、男たちの力関係を見極めて生き残りの道を探ろうとするバフィの女としての本能がリアルに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、ボーイは根っから悪意を持った人間ではなく、ハリーとバフィも常識人の範疇に入る。3人の駆け引きによる心理戦や、逃げ場を失ったハリーの葛藤と絶望といったものが掘り下げられず、映画にはほとんど緊張感がない。先住民のコミュニティには加わらず白人とも一線を引いているボーイの、どちらにも属せない苦悩だけでも共感できればもっと違った印象になったはずだ。たとえ撮影中にリヴァー・フェニックスが急逝したとしても。。。

オススメ度 ★★

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