こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ゴール・オブ・ザ・デッド

otello2014-05-08

ゴール・オブ・ザ・デッド

監督 バンジャマン・ロシェ/ティエリー・ポワロ
出演 アルバン・ルノワール/アメッド・シラ/ティファニー・ダビオ/シャーリー・ブルノー
ナンバー 79
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

あいつだけは絶対に許さない! 血の匂いを嗅ぎつけ人肉を喰らうゾンビとなっても恨みと憎しみは明確に意識している。そしてその男と決着を着けるためにゾンビはピッチに立つ。物語はサッカーの試合会場に乱入したゾンビによって選手のみならず観客まで罹患し、小さな村全体が地獄と化す惨状を描く。田舎村の地元愛と大都会に対するコンプレックス、サッカーがほとんど唯一の娯楽といっていいほどのうらぶれた雰囲気と村人は皆顔見知りという閉鎖社会、さらに明るい未来を展望できない諦め。そんな“地方”が抱える不満がリアルに再現される。首都ばかりに人と富が集中する、日本同様、都市と地方の格差は今やフランスでも深刻な社会問題なのだろう。ゾンビが現れなくても崩壊寸前の地方コミュニティの現状が哀しい。

故郷を見捨ててパリのクラブに移籍したサムは国内カップ戦で久々に帰郷するが、サッカーファンは猛反発。かつて親友だったジャノも復讐の機会をうかがいドーピングをするが、なぜかゾンビになってしまう。

サムはチームではいまやロートル扱いで、若手の有望株にエースの座を奪われている。同行するTVクルーにインタビューしてもらいたくて自ら売り込んでも相手にされず、試合開始直後レッドカードで退場処分を受け、早々とスタジアムを去り声をかけてきた娘とバーに繰り出す。このあたり、落ち目選手の寂寥感がひしひしと漂い、映画は人生の切なさを訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、遅れてグランドに登場したジャノは口から白い液体をまき散らし、だれかれとなく感染させる。その過程で阿鼻叫喚となったスタジアムからゾンビがあふれ出し街中に広がるが、生き残ったサムたちがゾンビと戦いつつも一人また一人餌食となる流れは通俗的。せっかくサッカーをテーマにしたのだから、ゾンビにもボールを蹴らせてほしかった。たとえばゾンビ化したことで選手のサッカーへの情熱が純化され、かえってフェアプレーに徹するようになるなどのアイデアがあれば面白かったのだが。。。

オススメ度 ★★

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