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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

K2 初登頂の真実

otello2014-05-14

K2 初登頂の真実
K2-LA MONTAGNA DEGLI ITALIANI

監督 ロバート・ドーンヘルム
出演 マルコ・ボッチ/マッシモ・ポッジョ/ミケーレ・アルハイク/ジュゼッペ・チェデルナ/ジョルジョ・ルパーノ/アルベルト・モリナーリ
ナンバー 110
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

はるか眼下に雲海がうねり、手を伸ばせば届きそうなところに空がある。人類の挑戦をことごとく退けてきた世界第2の高峰、その頂を初めて征服した2人の男は栄光をわがものとせずチーム全体の成功としてメディアに伝える。敗戦の痛手から立ち直っていない1950年代イタリア、物語は国民の士気を高めるためにK2初登頂を目指す登山隊の“真実”を描く。過酷な基礎訓練からメンバーの選抜、現地人ポーターとの軋轢、複雑になる人間関係。深い雪とむき出しの岩肌が聳え立つ頂上近くからの壮大で荘厳なな眺めはとは裏腹に、ぶつかり合う隊員たちのエゴ。“努力と友情”“規律と自己犠牲”などの日本人やドイツ人が好みそうなテーマとは一線を画し、崇高な目的を果たすためのチームワークよりも個人の思いが前面に出るイタリア人的な発想がスリリングな展開をもたらす。

K2登山隊を組織するデジオ教授は首相の援助を得て候補生を募り、集まった志願者をふるいにかけ精鋭12人を残す。そこには技術体力は申し分ないが自己顕示欲旺盛で和を乱しかねないヴァルテルも交じっていた。

ベースキャンプでリーダーに指名されたアキッレは、山頂アタックにもう1人を選ぶ権限を与えられ、ヴァルテルか岩登りに長けたリーノか迷う。その過程で、リーノの手紙を捨てるような男に資格はないと思わせて、実はリーノを落ち込ませないヴァルテルの心遣いだったという皮肉が観客に明かされる。さらにアキッレの小細工でヴァルテルはポーターと共にビバークを余儀なくされる。晴天が瞬く間に吹雪になる標高8000メートル付近、名誉欲と嫉妬といった人間的な感情が入り混じり、きれいごとではない登山隊の内情が暴露されていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて山頂にイタリアとパキスタン国旗をはためかせたアキッレとリーノ。それを確認したデジオは“イタリアの山だ”と叫ぶ。このあたり、地元民が霊峰と崇めている山に勝手にK2と名付け文字通り土足で踏み荒らしていく白人の姿に、まだまだアジアを見下していた時代の空気が濃密に再現されていた。

オススメ度 ★★*

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