こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ノア 約束の舟

otello2014-05-16

ノア 約束の舟 NOAH

監督 ダーレン・アロノフスキー
出演 ラッセル・クロウ/ジェニファー・コネリー/レイ・ウィンストン/エマ・ワトソン/アンソニー・ホプキンス/ローガン・ラーマン/ダグラス・ブース
ナンバー 111
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

堕落した人間たちを地上から一掃する、そんな神託を授かった男は神意を実現するために木造船を作り始める。舵も帆もない直方体、ただ水に沈まず漂流に耐える頑丈さを求めて設計されたその箱舟は巨大な棺桶のよう。だが、そこに収容されているのは未来を再建するための命。映画は“ノアの箱舟”のエピソードを元に、神から与えられた使命と家族への思いに葛藤する主人公の魂の彷徨を描く。神の僕として天命をまっとうするか、一家の長として家族を守るのか。選択を迫られた彼の狂気と苦悩の入り混じった表情が、軋轢と逡巡、そして大いなる愛と慈悲を象徴する。

セトの血を引くノアと妻子は、カインの末裔の蛮族から迫害を受けていた。ある日、世界が水没する夢を見たノアは、神のお告げと解釈し、岩石巨人化した堕天使たちの力を借りて箱舟建造に取り掛かる。

鬱蒼と茂る森の奥に切り開かれた空き地に組み立てられた壮大なスケールの箱舟。荒削りの丸太が垂直に交わり、直線のみの無骨な外観とできるだけ広く取られた内部スペースは、“舟”のイメージを覆す機能優先のデザイン。視覚的効果のクライマックスともいえる大洪水シーンは、何もかもなぎ倒していく圧倒的な水圧の脅威がリアルに再現されていた。箱舟が押し流され荒れ狂う波にもまれる姿は、大自然のなかでは人間もあらゆる生き物もほんのちっぽけな存在にすぎないことを実感させる。もしかして、これは70億を超えた地球人口問題の解決策を示しているのか?

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ノアは自分たちを含めた人間はすべて死に絶える運命と家族に伝える。ならば元から箱舟には乗らなければよかったはず。それをしなかったのは、やはりノアも神の心変わりを期待し、生き残って家族と共に過ごしたかったからだろう。理性と感情のバランスを取り、神の意志ではなく自らの意志で生きる道を決める、それこそが人間が人間である証明とこの作品は教えてくれる。

オススメ度 ★★★

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