こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

闇金ウシジマくん Part2

otello2014-05-19

闇金ウシジマくん Part2

監督 山口雅俊
出演 山田孝之/綾野剛/崎本大海/やべきょうすけ/菅田将暉/門脇麦/高橋メアリージュン/中尾明慶/窪田正孝/キムラ緑子/マキタスポーツ/光石研/柳楽優弥
ナンバー 114
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

何をやってもうまくいかず、何かを始める気力もない。クソみたいな日常を一瞬でも忘れたい気持ちを抑えきれず、その先に地獄が待っているとわかっていても目の前にぶら下げられた餌に食いついてしまう。映画はそんな、返済に首が回らなくなった挙句さらに高利に手を出してドツボにはまっていく人々の弱さをリアルに再現し、カネに振り回される愚かさを描く。楽して暮らそうとする男たち、愛されたいと切実に願う女たち、みな考えているのは自分の事ばかりで、一切の同情も共感も拒む。甘ったれた生き方しかできない彼らに“因果応報”という言葉を身を持って教える主人公は、堕落した人間に対する“神の怒り”を代弁しているようだ。

丑嶋の見習い・マサルは母の借金を肩代わりしてクビになり、以前から脅されていたヤンキーの愛沢を唆して丑嶋のカネを強奪する計画を練る。一方、フリーターの彩香はホストの麗に入れあげた末、丑嶋にカネを借り転落していく。

その他にも愛沢の妻、麗やマサルの母、麗とオバハン客の関係、彩香のストーカーといった多種多様な人物が散文的に登場する。それらのカネの流れの中心に丑嶋がいるわけだが、今回は取り立ての手口よりも追い詰められた男女の最後の悪あがきにスポットを当てる。死を選ぶ者、体を売る者、犯罪に走る者、もはや正常な思考・判断能力を失った彼らは一秒でも破滅を先延ばしにしようと暴走する。高橋メアリージュン扮する甲高い声でキレまくる女高利貸しがみせる“犬喰い”は、彼女の美貌との激しいギャップゆえに、強欲と暴力の世界で生き残ろうとする者のすさまじい執念と業の深さを感じさせた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

黙々と焼き鳥を焼き続ける麗、感情を殺して客を取る彩香、多額の負債を負ったマサル、夢に破れただ借金を返すためだけに生き続けなければならなくなった彼らが示す諦観が、命よりもカネを大切にする闇金に足を踏み入れてしまった後悔を物語っていた。それでも、最期に妻への思いを口にした愛沢に、わずかに人間らしい心が残っていたのが救いだった。

オススメ度 ★★★

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