こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ソウォン 願い

otello2014-05-24

ソウォン 願い

監督 イ・ジュニク
出演 ソル・ギョング/オム・ジウォン/キム・ヘスク/キム・サンホ/イ・レ
ナンバー 116
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

もちろん殺してやりたいほど憎い。謝罪も反省もなく白を切る被告に対し、恨みは募るばかり。だがそれ以上に、男は傷ついた娘の心をさらにかきむしってしまったことを後悔する。映画は、レイプされ瀕死の重傷を負った少女が恐怖と悲しみの底に落ち、彼女を支えるべき両親もまた深い苦悩と葛藤に追い詰められていく姿を描く。煮え立つ憤怒を抑え、娘を喜ばせようと着ぐるみの中で汗を流す父、妊娠中で精神状態が不安定な母、彼らに関わるカウンセラーや友人たち。奪われたものはとてつもなく大きい、もう幸せな過去には帰れない。それでも生きる勇気を失わなければ少しずつでも笑顔を取り戻せる。そんな、人の強さと優しさが目頭を熱くする。

ドンフンとミヒは8歳の娘・ソウォンとささやかな暮らしを営んでいた。ある日、ソウォンが変質者に襲われ、わずかな意識の中で犯人を特定する。一方でドンフンはマスコミからソウォンを守ろうと奔走する。

目を覆いたくなる暴行を受けた被害者なのに、報道による二次被害に遭いそうになる。記者から逃げる途中、ドンフンはソウォンを粗雑に扱ったために拒否反応を示され、彼女に近づけなってしまう。実の父にもかかわらず娘のそばにいてやれない辛さと悔しさを着ぐるみに押し込んでソウォンを見守るドンフン。同時にカウンセラーや着ぐるみ業者、工場長と妻子といった様々な人々が悲劇に見舞われた家族に寄り添い、そっと手を差し伸べてやる。当然事件には怒っているが、ソウォンたちが一日でも早く立ち直るのをより願っている。その過程は善意に満ち、人間はまだまだ信頼に値すると教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

周囲に散々心配をかけた、これからは気を使わせないように自分も気丈に振る舞わなければならない。回復と共に、誰よりも苦しいはずのソウォンが幼い胸に両親の気持ちを忖度する思いやりを育てている。そして彼女は、復讐は不幸を呼ぶだけ、愛のみが希望を生むとドンフンに伝えるのだ。あどけない表情の奥に秘めた祈りにも似た大いなる寛容、ソウォンを演じたイ・レが、その時“聖女”に見えた。

オススメ度 ★★★★

↓公式サイト↓