こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オー!ファーザー

otello2014-05-29

オー!ファーザー

監督 藤井道人
出演 岡田将生/忽那汐里/佐野史郎/河原雅彦/宮川大輔/村上淳/柄本明/賀来賢人
ナンバー 122
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

インテリ、勝負師、肉体派、ホスト。まったくタイプの違う4人を父に持つ少年は、それゆえ洞察力に優れ正義感と好奇心が強く困っている人を放っておけない。チンピラに捕まった友人を助け、不登校の級友を見舞い、目撃した窃盗の犯人を尾行する。張り巡らされた伏線、複雑に影響し合う偶然、無関係だった出来事が一つの結末に収斂していく時、彼は普通の家庭の4倍の父性愛と勇気で力づけられる。4人の中年男と高校生が一つ屋根の下で暮らすシュールな設定も、濃いキャラの俳優たちの好演で無理なく収まっていた。母親を中心とした同心円状にいる男たちが、彼女の不在のおかげでかえって結束する、そのアンビバレントな感情が愛おしい。

学校帰りにチンピラに呼び出された由紀夫は人質の鱒二を救出する。だが、鱒二は闇仕事をすっぽかして裏社会のボスに追われる羽目になり、由紀夫の父たちがボスを騙した詐欺犯を捜し出す条件で彼の身柄を預かる。

一方で知事選に絡む汚職と復讐が同時に進行し、偽装心中と級友の監禁事件にも巻き込まれた由紀夫は4人の父たちの知識と情報網とアイデアに背中を押されて、バラバラだった事件のピースを大きな絵にまとめていく。そこでは謎解きの面白さよりも、むしろ父親たちの由紀夫に対する思いの強さを描くことに重点を置く。映画は、自分こそが遺伝上の父親と主張したい反面、真実を知る怖さから彼らが奇妙な友情で結ばれているという状態を活写する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、原作小説は現実から少しずれた視点で世界を俯瞰する伊坂幸太郎ワールド全開だったが、映像化してしまうと個々の事件がつながっていく過程が強引なこじつけに思え、その必然性が感じられない。“手旗信号”も“電線で脱出”も、具体性を帯びると途端に陳腐に見えてしまった。何より、すべては運命によって導かれている、映像にそう印象づけるような強烈なインパクトが欠けていた。

オススメ度 ★★

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