こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サンシャイン 歌声が響く街

otello2014-05-30

サンシャイン 歌声が響く街 Sunshine on Leith

監督 デクスター・フレッチャ
出演 ピーター・ミュラン/ジェーン・ホロックス/ジョージ・マッケイ/アントニア・トーマス/ジェイソン・フレミング/ポール・ブラニガン
ナンバー 118
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

前線に向かう恐怖、無事帰還できた安堵と自責の念、新しい出会いのときめき、見知らぬ土地への期待と不安、裏切りと新たな希望。小さな町に住む普通の人々が、喜怒哀楽を甘く切ないメロディに乗せて口ずさむ。それらの歌はあくまで日常の延長線上で、抑制してきた胸中を漏らすような感じ。それゆえ、心の動きがリアルに再現され、つい登場人物に共感してしまった。映画は復員兵と両親、彼の親友の3組の男女が織りなす人間模様と葛藤を通じ、“今を生きる”素晴らしさを訴える。時にパートナーを悲しませるが、傷つけた方も苦しんでいる。それでも人生にいちばん大切なものは愛と信頼であるというこの作品のテーマは揺るぎない。

アフガンから戻ったデイヴィとアリー。アリーはデイヴィの妹・リズとお互いの気持ちを確かめ合い、デイヴィはイヴォンヌと恋に落ちる。その後、デイヴィの両親の銀婚式パーティで、アリーはリズにプロポーズするが断られる。

同時に、幸せだった他のカップルにも暗雲が立ち込めると、男たちはうろたえ、女たちは苛立つ。デイヴィとアリーは、友人や親族がいる故郷で平凡に暮らしたいと願っている。命がけの戦場体験が “もう冒険は十分”と彼らに思わせている。ところが、リズはフロリダに渡る夢を、イヴォンヌもやがてこの地を去る予定。スコットランドでも青年たちは地元愛のマイルドヤンキー化しているのだろうか。一方で娘たちは地方都市に留まるよりもっと広い世界で自分の可能性を試そうとする。男は一旗揚げるのを望み女は安定を求めた親世代とは対照的で、世代の違いを実感させる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

夫の隠し子の存在を許せなかった妻が、夫の急病を契機にいつの間にかその隠し子と仲良くなっている。そのあたり、戦うよりも理解し合うことで未来を築こうとする女の賢さとしたたかさが印象的だ。そして荷物をまとめたイヴォンヌを追って己の思いを打ち明けるデイヴィ。街の広場で大勢の老若男女が歌い踊るクライマックスに胸の高鳴りが抑えきれなかった。。。

オススメ度 ★★★★

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