こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジゴロ・イン・ニューヨーク

otello2014-05-31

ジゴロ・イン・ニューヨーク Fading Gigolo

監督 ジョン・タトゥーロ
出演 ジョン・タトゥーロ/ウディ・アレン/バネッサ・パラディ/リーブ・シュレイバー/シャロン・ストーン/ソフィア・ベルガラ
ナンバー 117
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

理屈っぽいおしゃべり、カネ勘定には敏感、口と手が同時に動く。かつての本拠地ニューヨークに戻ったウディ・アレンが自身の作品で何度も演じたユダヤ系小市民に扮し、水を得た魚のごとく生き生きした表情と収まるところに収まった安心感を醸し出す。また、しっとりと落ち着いた住宅街、秋の彩りを放つ街路樹や公園の木々、それら人々の日常に密着した街の風景は大人の香りを漂わせる。物語は、誘われて男娼になった男が、セックスよりも崇高な愛に目覚め、自らの生き方を省みる姿を描く。マンハッタンの高級コンドミニアムに住むリッチな医師からブルックリンの質素なアパートで暮らす未亡人まで、寡黙な非イケメンの主人公があらゆる階層の女の話に真摯に耳を傾ける様子は、男のモテ度は顔ではないと教えてくれる。

元書店主・マレーは花屋のバイト店員・フィオラにジゴロの仕事を持ちかける。フィオラの“お試し”は女性客に大好評、マレーは次々と新規客を紹介する。ある日、ユダヤ教指導者の未亡人・アヴィガルがフィオラの元を訪れる。

厳しい戒律ゆえ頭髪を隠し男性との接触を避けてきたアヴィガルは、フィオラのマッサージを背中に受けて涙する。夫を失って以来“女”として扱われてこなかった彼女の寂しさが一気に噴出した瞬間だ。いまだ髪型服装から言語まで伝統としきたりを守る厳格なユダヤ教徒は21世紀のNYとは思えないほど古風で、生活に深く根付いた習慣は女性の権利を著しく制限している。フィオラはそんな環境で生きるアヴィガルに、フリーセックスの女たちにない魅力を発見する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、お互い相手への思いに胸をときめかせるようになったふたりは、人目を盗んで逢瀬を重ねる。初めてデートする少女のような恥じらいと共に、アヴィガルはフィオラにウィッグを脱ぐ。それは彼女にとって裸を見せるのと同じ意味を持つ行為なのだ。“愛とは痛みを伴うもの”という言葉が、ふたりのままならない人生を象徴していた。

オススメ度 ★★★

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