こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

罪の手ざわり

otello2014-06-04

罪の手ざわり 天注定

監督 ジャ・ジャンクー
出演 チャオ・タオ/チアン・ウー/ワン・バオキアン/ルオ・ランシャン
ナンバー 128
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

きっかけは歪んだ正義感、村ぐるみの汚職と強欲な企業家に業を煮やした炭鉱夫は、周囲の人々が“長いものに巻かれる”状況でも一歩も引かず不正を暴こうとする。成功した同級生に対する妬み以上に、市場経済の波に乗り遅れ豊かになり損ねた才覚のない己に腹を立てているのだろう。映画は、彼が引き起こす事件の他にも、出稼ぎと偽って旅先から妻に仕送りを続ける強盗、不倫を清算して未来に進もうとする女、負債を背負ったまま逃亡先で恋に落ちる青年といった、市井の人々の日常に降りかかる“死”を描く。今や圧倒的に開いてしまった人民と富裕層の格差、カネのために人生を狂わされた彼らの抱える問題は、そのまま現代中国の病巣なのだ。

村の炭鉱を格安で買い富を築いたジャオを憎むダーハイは、彼と村長を告発しようとするが相手にされない。帰郷したジャオに近づこうとして暴行を受けたダーハイは、猟銃を持ち出して次々とジャオの協力者たちを訪れる。

ジャオは自家用ジェットに乗っているのに、自分は古びたバイクにまたがり不味い麺をすすっている。出稼ぎ労働者よりはマシな待遇だが、辛い肉体労働を強いられ生きているのが精いっぱいの現状は変わらない。そんな自身を、疲れ果て動けなくなっても鞭打たれる農耕馬に投影するダーハイの思いが切実だ。もはや歯止めが効かなくなったダーハイは無関係なはずの農夫にまで散弾を見舞う。苦役から解放された馬が束の間の自由を楽しむ姿が、人間の尊厳を取り戻すために暴走したダーハイの魂を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

風俗サウナの受付で働くシャオユーは、文字通り札束で頬をひっぱたかれる。小金を持った地元のゴロツキたちに性的サービスを強要され、断ってもしつこく付きまとわれる。カネでなんでも買えると勘違いしている男たちと、不浄なカネは受け取りたくないシャオユー。自由化の毒に冒されずに生きる難しさを、彼女が手にした血だらけのナイフが饒舌に物語っていた。。。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓