こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ニード・フォー・スピード

otello2014-06-09

ニード・フォー・スピード NEED FOR SPEED

監督 スコット・ウォー
出演 アーロン・ポール/ドミニク・クーパー/イモージェン・プーツ/スコット・メスカディ/ラミ・マレック/ラモン・ロドリゲス/マイケル・キートン
ナンバー 133
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

エンジンをチューンアップし、サスペンションを鍛え、IT通信機を備えた改造車で4000キロを超える道のりを2昼夜走り続ける男女。パトカーの追走を振り切り、道路を逆走し、ハイウェイを飛び越え、走行しながら給油する。それは選ばれし者だけのレースに参加する資格を得る目的のアピール。猛スピードで激走しながらも一般車両には被害を及ぼさない超絶テクニックを撮影し、動画投稿サイトで公開するあたりがいかにも現代的だ。物語は親友を殺された上に罠に嵌められて服役した男が、復讐の長い道のりを進む姿を描く。空気抵抗を抑えるフォルムが官能的なイタリア車に対し、マッチョな排気音を響かせる米国車という構図は、資本家と労働者の階級闘争を見ているようだ。

自動車修理工のトビーはかつてのライバル・ディーノの姦計で有罪判決を受ける。出所後、ディーノも出場する公道レースにエントリーするために、トビーはジュリアと共に自ら手をかけたマスタングでNYからサンフランシスコを目指す。

道中、修理工仲間を集め、マスタングの持ち主であるジュリアとも心を通わせるトビー。だが、映画はそんな人間関係の機微やご都合主義的な細かい齟齬には目をつむり、ひたすらトビーのクルマへの情熱にフォーカスする。そこで見せるのは荒唐無稽のようで、実は計算され尽くした技術とタイミングが織りなす高度なスタント。道幅の広い郊外では速度を重視し、都市部の入り組んだ隘路ではミリ単位のステアリングさばきで障害物をよけるスリルを前面に出すカーアクションは、ドライバーズシートの緊張を体感させてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、マスタングといえばフォードの、いや、米国の自動車産業を象徴するスポーツカーのはず。大陸横断中に米国製のパトカーやSUVとは“勝負”するのに、肝心のレースに、なぜこのクルマを出走させないのだ? 欧州のスーパーカーを打ち破ってこそ、トビーに代表される“モノづくりの精神”と“ブルーカラーの誇り”を体現できると思うのだが。。。

オススメ度 ★★*

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