こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

思春期ごっこ

otello2014-06-13

思春期ごっこ

監督 倉本雷大
出演 未来穂香/青山美郷/逢沢りな/伊藤梨沙子/荻野可鈴/井之上史織/真山明大/川村ゆきえ
ナンバー 131
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

教室で交わす意味ありげな視線、美術室でたたずむ静かな放課後、水をかけてじゃれ合ったプールサイド。永遠に続くと信じていた友情は恋に似た激しい思いに変化し、少女たちの関係が濃密になるほど繊細に、そして脆くなる。やがて親友と思っていた相手に新しい知り合いができたことから、彼女たちの間に小さな亀裂が入り次第に距離ができていく。初めて見聞する広く大きな大人の世界、そこは己の可能性を伸ばしてくれる場所、一度知ってしまったら同級生が幼く見えてしまうのだ。残酷なほど美しく息苦しいほど懐かしい、映画は中学三年の夏を抒情たっぷりの映像で再現する。まだ無垢でいられるギリギリの年ごろの彼女たちの息遣いが瑞々しい。

美術系高校志望の鷹音はクラスメートの美佳をモデルに毎日肖像を描いていた。ある日、美佳は愛読書の著者・奈美江と出合い、彼女に自作の物語を読んでもらう。奈美江に夢中になっていく美佳を鷹音は複雑な気持ちで見守る。

逆光に浮かび上がるシルエット、廊下・階段を走り回る彼女たちをとらえた流麗なカメラワーク、感傷を見透かすアップ。美佳と鷹音の心理を表現した画作りは非常に洗練されていて、ファンタジックな写真集を見ているよう。至福の時間が、嫉妬と裏切り、怒りや軽蔑に満ちていく過程すら、乙女チックな風合いを失わない。煩悶を持て余し理解できない行動をとってしまう、少女たちがみせるきらめきと翳りのコントラストが鮮やかだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後図書館のお話会で奈美江の盗用を知った美佳は深く傷つく。だが、もう鷹音に頼ろうとはしない。それがまた鷹音を苛立たせる。なんでも話し合える親友が、いつしかウザい存在になっている。自分たちが作った聖域にいつまでもとどまっているわけにはいかないけれど、それでも以前の仲良しに戻るきっかけを探している。思春期の終わりと青年期のはじまり、そんな彼女たちの揺れ動く感情がリアルに活写されていた。

オススメ度 ★★★*

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