こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

幕末高校生

otello2014-06-20

幕末高校生

監督 李闘士男
出演 玉木宏/石原さとみ/柄本時生/川口春奈/千葉雄大/谷村美月/吉田羊/柄本明/伊武雅刀/石橋蓮司/佐藤浩市
ナンバー 112
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

江戸を戦火から救い、日本の進むべき道を示した英雄のはずなのに、能天気に待つばかり。歴史の教科書の記述から受ける“理想のために身の危険を顧みず英断を下した男”のイメージはかけらもない。女房の尻に敷かれ、暴漢に襲われるとへっぴり腰で逃げ、会議ではのらりくらりと言い逃れる。そんな肩の力が抜けた勝海舟像を、玉木宏が飄々と楽しんでいる。そして、すべきことはすべて手を打ちあとは天命にゆだねる腹の座った侍でもある二面性をコミカルに演じ分ける。物語は薩長vs幕府軍の江戸決戦数日前にタイムスリップした高校生と女教師が、国の未来のために汗を流す彼に共感し、自らの生き方を省みる姿を描く。

不思議なスマホアプリで西郷隆盛軍総攻撃5日前の江戸にタイムスリップした歴史教諭の未香子と教え子の雅也は、勝海舟に保護される。そこでは歴史書にはない出来事が起き、正しい過去に戻すために未香子と雅也は勝を動かそうとする。

非戦派の勝は幕府内の主戦派から腰抜け呼ばわりされている。だが、米国の先進文明を目の当たりにしている彼は日本人同士で争っている場合ではないと、あくまで西郷との戦いを避けようとする。内乱に乗じて西洋列強が介入するのを恐れ、いざという時は焦土作戦も覚悟している。その過程で未香子たちは、ボンクラのように見えていた勝が実は幕府一の愛国者で、一度決めたらやり通す不屈の精神の持ち主だったと知る。己の命や名誉よりも大局を見る彼の行動に、中途半端だった自分の人生を反省するのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で、同時にタイムスリップした女高生・恵理は、未香子たちより半年前に着地。その間、主戦派の筆頭・柳田を籠絡し、彼の娘や女中たちにコギャルメークを伝授するなどすっかり柳田家に馴染んでいる。彼女の存在は、女子にとって“カワイイ”はあらゆる時代と場所において自己表現のキーワードになりうると示唆していた。武力衝突するよりかわいらしさを競い合う、血なまぐさい世の中ほど遊び心が必要であると、恵理のキャラクターは訴えていた。

オススメ度 ★★*

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