こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

プロミスト・ランド

otello2014-06-21

プロミスト・ランド PROMISED LAND

監督 ガス・ヴァン・サント
出演 マット・デイモン/ジョン・クラシンスキー/フランシス・マクドーマンド/ローズマリー・デウィット/スクート・マクネイリー/タイタス・ウェリヴァー/ハル・ホルブルック
ナンバー 141
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

疲弊した農村を潤し借金苦にあえぐ農家に薔薇色の未来を見せる男。地中深く眠る宝の山を掘りだせば、自分のみならず地域にも利益をもたらすと信じている。少しは動植物に悪影響を与える可能性もあるが、カネの力が否定的見解をねじ伏せていくはず。物語は天然資源買い占めを図る開発業者社員と環境保護派、住民たちの軋轢を描く。ここでは民主主義のルールが一応いきわたり、賛成派と反対派が怒鳴り合うわけでもなく、暴力や恫喝が横行することもない。多少の賄賂はあっても、意見を述べる権利は保障されている。交渉は淡々と進み、話し合いは理性的。札束に目がくらんだ人間の末路もあえて避ける。それだけにあまりにも静かに素早く浸透するスマートな悪意が衝撃的だった。

エネルギー企業幹部のスティーブはシェールガス採掘権の契約をまとめるために地権者を回る。同時に住民説明会を開くが、反対派のフランクの指摘で住民投票にもちこまれる。そこに環境保護団体のメンバー・ダスティンが乗り込んでくる。

スティーブはなだめすかし巧みにサインを集めるが、それ以上に弁舌さわやかなダスティンに町の人々は魅了されていく。ガス田がまき散らす有害物質のせいで死んだ家畜の写真がリアルな説得力を持ち、小学校教師のアリスもダスティンの言いなり。豊かさの高い代償、映画は開発業者だけを断罪せず、農村の没落に有効な手を打てない行政の怠慢も問うているかのよう。行き過ぎた自由主義経済の結果、農業に夢を見出せなくなり、時代に取り残された農村が最後の希望にすがる現実が痛ましい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

“いい人間だが、仕事が残念”とフランクに言われるスティーブ。農民の心情が分かるスティーブは、本心からシェールガスで農村を救済したいと思っていて、住民にも気持ちは伝わっている。そんな彼が突然己の生き方に疑いを持つ。そのきっかけが環境問題といった大それた外的要因ではなく、あくまで個人的な事情だったというあたりの脚本の仕掛けが斬新で秀逸だった。

オススメ度 ★★★*

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